この記事をまとめると
■バイクの世界ではV型4気筒エンジンが広く使われている
■V4エンジンはクルマにほとんど採用されていない
■コストがかかり機構も複雑なのでクルマに採用するメリットが少ない
クルマにはなぜV4エンジンがない?
2025年9月最後の週末に、モビリティリゾートもてぎで開催された2輪の最高峰レースMotoGP日本グランプリでは、ドゥカティに乗るフランチェスコ・バニャイア選手が勝利しました。ご存じのように、現在のMotoGPにはホンダやヤマハをはじめ、ドゥカティやアプリリア、KTMといったメイクスが参戦していますが、いずれもV型4気筒エンジン(以下、V4エンジン)を積んでいます。
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じつは、今シーズンの開幕時点ではヤマハのみ直列4気筒エンジンを積んでいましたが、9月にV4エンジンにスイッチしたばかり。つまり、2輪車の世界ではV4エンジンというのは、サーキット的な運動性能を求めたときの最適解ともいえるのです。市販モデルでもドゥカティのV4エンジン搭載車、その名も「パニガーレV4」シリーズはハイパフォーマンスなスーパースポーツとして広く知られています。
しかしながら、4輪車ではV4エンジン搭載車は不思議なほど見当たりません。1960年代まで遡ると、ランチア・フルビアやフォード・タウナスといったV4エンジンを積んでいたモデルもありますが、逆にいうと直近の半世紀においてはV4エンジンの4輪車というのは、少なくとも量産モデルにおいて存在しないといえます。
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その理由を知るには、V型エンジンの特徴について整理する必要があるでしょう。4気筒に限らず、同じ気筒数であればV型エンジンは直列エンジンに比べて、以下のようなメリット・デメリットがあります。
●V型エンジンのメリット
・クランクシャフトが短く、エンジン自体がコンパクト
・ヘッドの位置を低くできるので、低重心化に貢献する
・2輪車の場合、同気筒の直列エンジンより前面投影面積を小さくしやすい
●V型エンジンのデメリット
・ヘッドがふたつ必要になるなど構造が複雑になりコストアップする
・マスの集中にはつながるが排気レイアウトの自由度が低い
・プラグ交換などの車上メンテナンス性は直列エンジンより不利
上記のメリット・デメリットは、4輪車における6気筒エンジンでの、V型と直列の比較でも同じことがいえます。6気筒エンジンについては、マツダのように直列を新開発したメーカーもありますが、全体としてはV型が主流です。そうであればこそ、ますます市販4輪車からV4エンジンが消えている状況が不思議に思えてきます。