この記事をまとめると
■1912年創業のベルトーネが築いたデザイン史を継いだモデルが「ヌッチョ」
■創業100周年記念モデルとして2012年ジュネーブショーに登場した
■フェラーリF430をベースに市販化を目指すもブランドの破産により幻の一台となった
ベルトーネひさびさのウエッジシェイプモデル
イタリアの老舗カロッツェリア(自動車、古くは馬車のボディデザインや、製作を請け負う工房)としてその名前を広く知られていたベルトーネ。ジョバンニ・ベルトーネによってこのカロッツェリアが創業されたのは1912年のことだったが、第二次世界大戦が終結すると、ジョバンニはその経営権を息子のジョゼッペ・「ヌッチョ」・ベルトーネへと譲渡。優秀なデザイナーでもあったヌッチョは、それからさまざまな作品を残していくとともに、ベルトーネを自動車メーカーからの依頼による、本格的なボディ製作を可能にする大企業へと発展させたのだった。
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ヌッチョはまた、卓越した実力をもつデザイナーを発掘するという点でも非凡な才能をもちあわせていた。ジョバンニ・ミケロッティ、フランコ・スカリオーネ、ジョルジョット・ジウジアーロ、マルッチェロ・ガンディーニ。彼らはいずれも斬新で美しいデザインを生み出したが、そのなかでもとくに注目されたのは、ガンディーニの手によるウエッジシェイプ(くさび型)のスタイルだった。
それは1967年のアルファロメオ・カラボに始まり、1970年のランチア・ストラトスゼロ、さらに1971年に発表されたランボルギーニ・カウンタックのプロトタイプであるLP500を経て、1973年についにランボルギーニ・カウンタックLP400となって結実した。カウンタックがいまもなおスーパーカーの象徴として語られる理由のひとつに、その斬新で未来的なウエッジシェイプデザインがあることは誰もがそれを認めるところだろう。
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そのウエッジシェイプデザインをもつコンセプトカーが、ひさびさにベルトーネから提案されたのは、2012年3月に開催されたジュネーブショーでのことだった。かつて、半世紀以上にもわたってベルトーネを率いてきた「ヌッチョ」の名を掲げたこのコンセプトカーは、ベルトーネの創業100周年を記念するアニバーサリーモデルとして企画されたものであり、それにベルトーネの象徴的なスタイルともいえるウエッジシェイプが採用されたのも、過去を振り返ればまさに当然の選択といえた。
2012年のジュネーブショーに出展されたベルトーネ・ヌッチョ画像はこちら
ジュネーブショーに姿を現したヌッチョは、一瞬で見る者の目を魅了するだけのオーラに満ち溢れていた。ボンネットからフロントウインドウを経てルーフへと連続する一直線のラインは、まさにウエッジシェイプデザインの典型的なフィニッシュ。車高は1120mmに抑えられているが、かつてのランチア・ストラトス・ゼロのそれがわずか840mmだったことを考えれば、このヌッチョではキャビンの居住性も十分に考慮されていることがわかる。
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リヤウインドウはないが、その代わりに26インチのスクリーンが装備され、それに後方の映像が映し出される仕組み。左右のドアも通常の横開きとなっている。