この記事をまとめると
■外国人は「特定技能」を取得することで日本での在留資格が得られる
■「特定技能」にはトラックやタクシーなどの運転手も含まれている
■埼玉県と徳島県の自動車教習所が共同でベトナムの教習所にて日本のルールを教えている
ベトナムの教習所を日本の教習所が支援
近年、インバウンドが増加したこともあって、全国各地で外国人を見かけることが増えたようだ。インバウンドは観光客だからそれほど長期間滞在をしないし、お金は使っても稼いで帰るといったようなことはない。しかし、なかには働くことを目的に来日する人もいる。これに対して、政府は出入国管理法や難民認定法などの法律に基づき、「在留資格」を定めて活動できる範囲を厳格に定めているのだ。
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この「在留資格」を分類したもののなかに、「特定技能」という項目がある。2018年に定められ、2019年から受け入れが可能になった比較的新しい資格である。その背景にあるのは、少子高齢化などによる人手不足を解消するべく、労働力を海外に求めたことだ。
制定当初、「自動車運送業」はその対象外であったが、2024年にはトラックやタクシーなどの運転手も、資格を得た外国人が就労できるようになっている。
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対象者はすべての外国人だが、実際にこの制度を利用しているのはアジア系の人が多いとされる。なかでも、ベトナムには日本で働きたいと考える若者が多数いるのだ。その理由は、
• 日本はベトナムの経済発展などに、ODA(政府開発援助)などで積極的な支援をしている
• 日本のアニメなどの文化が若者の間に浸透している
• ベトナムに比べて、日本の生活環境や賃金に魅力がある
• ベトナムからの地理的な距離が比較的近い
などといったことなのだそうだ。
ただ、日本でドライバーをやりたいと思ってもベトナムの交通事情やルールは、日本のそれと大きく違っている。彼らは本国でペーパーテストを受けて、それに合格すれば来日できるようになる。そのあとに日本で通じる運転技術を学ぶのは、お金や時間の面で難しい部分があるのだ。
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そこで、埼玉県と徳島県の自動車教習所が共同で日本式の運転教育プログラムを考案し、ベトナムの大手自動車教習所で運転実技が学べるシステムを構築した。「自動車運送業」は、客や荷物を運ぶ仕事。いわば、運転のプロでなければならない。ベトナムと日本では交通ルールや道路環境、運転に対する考え方にも大きな違いがある。それを理解せずして、ブロのドライバーになるのには無理があるといえよう。
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今回開発されたプログラムは、「日本とベトナムで運転方法が異なるポイント」と、「外免切り替え(外国で取得した運転免許証をもつ者が、日本で運転する知識・技能があると認められる場合に発行される免許証)の技能確認で見られるポイント」を中心に構成されている。具体的な内容は、
•乗車前安全確認
•運転姿勢の調整
•左側通行の右左折(ベトナムは右側通行)
•進路変更の安全確認
•優先関係
• 一時停止(ベトナムにはない規制)
などである。こういった知識を本国でしっかりと身につけてから来日すれば、スムースに「自動車運送業」に就業が可能になるのだ。
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このプログラムを終了したあと、両教習所と提携する登録支援会社に採用されれば、日本の運輸事業者における働き方を解説するセミナーを受講できる。これらを終了すれば、特定技能資格を希望するベトナム人のスキルが必然的に向上することになるのだ。希望をもって来日するベトナム人が、こういった手厚い支援で気持ちよく就業し、日本の「自動車運送業」の新たな担い手になることを願いたいものである。