この記事をまとめると
■レーシングドライバーの中谷明彦さんがアウディの最新EV&MHEVに試乗した
■S6スポーツバックe-tronクワトロでは圧倒的な加速と静粛性を感じた
■Q5エディションワンはディーゼルターボ+MHEV+クワトロシステムが魅力だ
EVとディーゼルMHEVでアウディの現在地を再確認
今回は、アウディのフラッグシップモデルといえる2台に一気試乗してきた。
1台目はアウディS6スポーツバックe-tron。そう、そのネーミングから明らかなようにBEV(電気自動車)モデルだ。もう1台はQ5エディションワン。こちらはディーゼルターボにマイルドハイブリッド(MHEV)を組み合わせたQ5 TDIをベースにした限定車で、ユーザー待望のモデルとなっている。
アウディS6スポーツバックe-tronとQ5エディションワンのフロントスタイリング画像はこちら
まずはS6スポーツバックe-tronに乗ってみる。「S」のネーミングは伝統的にアウディ社のスポーツモデルに付けられる。BEVで名乗るということは、その走行性性能に相当な自信があるということだ。
外観的には流麗な車体デザインが迫力と美しさを物語っており、クルマ好きなら誰でも気もちを惹かれるだろう。とくに、空気抵抗係数0.21という圧倒的なCd値を実現しているといい、電費や風切音などにもデザイン的アプローチが施されている。段差の少ないフロントグリルまわりやボディサイドのスムースなライン。低いルーフとハッチバックのテールゲート傾斜角など、視覚的にも気流の流れがよさそうに見える。
アウディS6スポーツバックe-tronのフロントスタイリング画像はこちら
車体ディメンションは全長4930mm、全幅は1925mmと大きいが、全高を1470mmと低くし、ワイド&ローで地を這うようなフォルムを形成している。
コクピットに乗り込むと、すべてが新鮮だ。アウディ車に触れるのは久しぶりだったこともあり、システムの起動からミラーの調整、ヘッドライトの点灯など、すべての操作に手間取ってしまう。さらに大きなセンターモニターに表示される機能の理解、メーター表示機能のステアリング切り替えスイッチなど、走り出すまでに5分以上の時間がかかってしまった。
アウディS6スポーツバックe-tronのインパネ画像はこちら
S6スポーツバックe-tronのパワートレインは、フロントアクスルに140kW/275Nmの駆動モーターを配置。リヤアクスルには280kW/580Nmの駆動モーターを置き、4輪を駆動するAWDとしている。システム最高出力は405kW(ローンチコントロール起動時/通常は370kW)に達し、0-100km/h加速タイム3.9秒。最高速度は240km/hと公表されている。
もちろん、今回の一般道でその性能を試すことはできないので、今回は乗用域のドライバビリティを確認するにとどまらずを得ない。
このモーターを稼働させるエネルギーは、フロア下にマウントした100kWhのバッテリーから供給されるが、一充電走行距離はWLTCモードで726kmとなっている。ちなみにA6スポーツバックe-tronなら、レンジプラスパッケージを選択することで航続距離は846kmまで延伸し、国内最長航続距離を実現している。充電はCHAdeMOの135kWに対応しているが、自宅で200V充電して満充電で走り出せば、大概のドライブケースで外出先での充電を気にしなくて済みそうだ。
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走り出すと、「静かでスムースで力強い」に尽きる。このフレーズはすべてのBEVに適応する言葉で、あとはアクセルペダルの踏み加減で上限へのアプローチ特性が異なる。もちろん一般道にて60km/h以下で走行すれば、軽自動車のBEV車でも同様のフレーズが使える。
S6スポーツバックe-tronの本領を試せるのは、現代ではサーキットしかなくなっているのが現状。となると、この性能は果たしてBEVに必要なのか? と問わざるを得ない。ガソリンエンジン搭載車でも同じで、公道を走るだけなら500馬力も600馬力も必要ない。ただ、エンジンの場合は回転数による排気音、トルク特性の変化を、ミッションで操りながら感じとり走らせる楽しみが残っている。BEVはそこがフラットで、音もしないので味気なく感じてしまうのだ。