この記事をまとめると
■アメリカではフォードのトラックであるFシリーズが圧倒的に売れている
■トラックがアメリカで売れているのはオーナーのライフスタイルを象徴するためだ
■アメリカ人にとってトラックは便利な乗り物というだけでなく心のよりどころでもある
アメリカ人はなぜトラックが好きなのか?
ちと古臭いいい方ですが、アメリカはやっぱり世界一の消費大国に違いありません。なにしろ、あのiPhoneが年間7000万台以上も売れているのです。驚くのはここからで、スマホの次に売れているのがピックアップトラックなのだそうです。いくら広大な国土とはいえ、どうしてトラックなのか? とりわけフォードのFシリーズなどは2018年には年間90万台も売り上げていて、1車種で国産メーカーの全売上台数をしのぐほど。まったく、アメリカ人はどんだけトラック好きなのでしょう。
48年連続年間販売台数トップのフォードFシリーズ画像はこちら
2024年のデータを見ると、アメリカの車種別売上げはトラックが圧勝しています。トップはフォードF150、次いでダッジ・ラム、シボレー・シルバラードという順で、これらの合計台数は200万台にほど近い数字に上ります。当然、これは新車の登録台数ですので、中古車を含めればその倍、いや3倍に膨れ上がるという説もあながち大げさとは思えません。
商用車という日本でのイメージとは違い、アメリカでピックアップトラックはライフスタイルを表現するアイテムという見方もできますが、それにしても台数がハンパない。上述のとおり、道幅が広いとかガソリンが安いといった好条件はあるものの、セダンやコンパクトカーの売り上げはそこまで伸びていません。SUVも同様で、売れ筋のトヨタRAV4にしてもフォードの半分程度で、トラック人気の脅威にはなっていないのです。
フォードF150の走行シーン画像はこちら
こうなると、アメリカ人のDNAにはもとから「トラック大好き遺伝子」でも入っているのかと疑いたくもなります。実際、テレビドラマや映画でピックアップトラックが主役並みに活躍する作品は少なくありません。無論、セダンやスポーツカーこそ絵になるものの、生活に根差したリアリティあるシーンに映っているのは、やっぱりトラックが多い印象。そもそも、西部劇に出てくる幌馬車だってピックアップトラックのご先祖様ですからね。
また、アメリカンサイズの実用性も無視できないポイントかと。コストコなどアメリカ由来のスーパーに行けばわかるとおり、なにもかもスケールがデカい。となると、ピックアップの荷台が役立つわけで、ピザやチキンの買いだめなんかはもちろん、自分で家を建てちゃう人が少なくないアメリカだけに、長尺の材木やらちょっとした建築機材だって載せられます。ジェットスキーやバイクにいたっては、何をかいわんやといったところかと。
荷台に荷物を積み込まれるトラック画像はこちら
無論、ピックアップトラックとはいえ、メーカーによる商品性の向上もユーザーを惹きつける理由に違いありません。ひところのフルパワー一辺倒なだけでなく、インフォテイメントの充実だったり、ハイブリッドモデルの追加などバリエーションの拡充ぶりは驚くほど進化しています。実際、Fシリーズは5モデルがラインアップし、グレードをすべて合わせたら20や30バリエどころではありません。老若男女問わず、自分にピッタリなトラックが選べるとなれば人気が定着するのも当然かと。
ともあれ、実用性や商品性の高さといった理由に加え、現実的な経済性や政策的な要因などさまざまな理由があれど、最終的にはアメリカ人の開拓者精神とか、独立気質といったものがピックアップトラックに向いている、そう結論づけられる気がします。つまり、便利な相棒というだけでなく、ヤンキーにとって心のよりどころ以外の何物でもないというわけです。