この記事をまとめると
■高速道路規制帯への突っ込み事故が増加傾向にある
■運転支援装置を過大評価していることが事故の原因のひとつだ
■工事現場で使われる機器にも事故を防ぐためのシステムが多数採用されている
事故を防ぐために工事関連の設備も進化
近年、増加傾向にあるという高速道路規制帯への突っ込み事故。その原因はさまざまあるが、目立つのがスマホなどの操作によるわき見運転と、まわりの景色に変化が乏しい高速道路特有の漫然運転に加えて、近年増えてきている運転支援装置の過信だといわれている。運転手が装置を万能だと勘違いし、前方を注視していなくて突っ込んでしまうのだ。
規制を担う警備会社や工事を行う建設会社では、現場に立つ社員に実際にあった突っ込み事故のビデオを見せて教育を行うそうだ。記録映像を解析して得られた情報によると、クルマが突っ込んでくるという認識がされてから、実際に事故が起こるまでの時間はわずか2秒程度。よほど俊敏な人でなければ避けようがない。緩衝装置を備えた車両が配置されているものの、それで突っ込んでくるクルマを完全に止められる保証はない。
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規制が行なわれていることは、国の基準に沿って路側の標識や電光板を備えた標識車などにより、何キロも手前から予告が行なわれる。さらに、通常は規制区域手前から50km/hの速度規制もかかる。規制区域に入ると、矢板やパイロンでテーパー状に車線を閉鎖し、そこでは電光板を備えた標識車・誘導係員(誘導人形)・発煙筒・フラッシュライトなどで、規制していることを知らせている。
と、これだけ手厚く告知されているにもかかわらず、前述のように規制を見落とすドライバーがあとを絶たないのだ。
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そこで、見ていないなら音で知らせようと新たな装置が登場した。それが、「高警告サイレン」だ。
これは、通常の緊急車両サイレンとは異なる不協和音を発するもの。高速道路は走行音や風切り音がうるさいこともあり、多くの車両は窓を閉めているから外の音が聞こえにくい。そこで、車内にも届きやすい600Hz以下の音や、人の耳に届きやすい3kHz周辺の音を増強しているのだ。
さらに、超指向性のスピーカーも開発されている。タイプによって違いはあるが、20~60m程度先にまで音が届く。ところが、発する音が超音波なので何らかの物体に当たらない限り無音なのだ。いい換えれば、向かってくる車両に発せられた超音波が当たることで可聴音になり、ドライバーが規制に気づくという仕組みになっているということだ。
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これまでは多くの場合、規制帯の端で警備員が見張りを行い、危険が発生したら声や警笛で作業員に知らせていた。危険を発見した警備員は自らの安全を図りながら警告を発せねばならず、クルマが突っ込むまでの約2秒間で、作業員に危険を伝えるのは簡単なことではない。そこでセンサーを設置してその検知エリアに車両が侵入したら、作業員の持つ端末や作業現場に設置されたスピーカーを使用して、危険を知らせるといったシステムも開発されている。
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高速道路の工事は安全走行には不可欠なものであり、警備員や作業員が安心して工事に集中できるように、こういった新たな機器やシステムが開発されているのだ。とはいえ、事故防止のカギとなるのは通行車両を運転するドライバーだ。わき見・漫然運転・居眠りなどは論外だが、安全支援装置を過信することなく運転に集中をして、規制帯に突っ込まないように注意を払いたいものである。