この記事をまとめると
■615馬力で0-100km/h加速3.3秒のキャデラック最強BEV「リリックV」に試乗した
■箱根ワインディングで見せたよく曲がるアメ車の完成度に試乗した中谷明彦さんも驚愕
■リリックVは快適性とスポーツ性能を両立した新世代のVシリーズだった
決して直線番長ではない現代のアメ車
アメリカ車に対して、日本ではいまだに古いイメージをもっている人が少なくない。大排気量で直線だけが得意。サスペンションは柔らかく、高速道路をゆったり流すための乗りもの。そういった固定観念だ。
しかし、実際に長年この業界でアメリカ車にも触れてきた立場からいえば、その認識はかなり昔に覆されている。むしろ近年のアメリカ車、とくにGM系のシャシー制御や限界域のまとめ方には、欧州車とも日本車とも違う独特の成熟がある。
今回、箱根で試乗したキャデラック・リリックVは、現代のアメリカ車がもつ底力をBEVという新世代パッケージのなかで鮮烈に見せつけた一台といえた。
キャデラック・リリックVと中谷明彦さん画像はこちら
まず驚かされたのは、そのスペックである。前後デュアルモーターによる四輪駆動。システム最高出力は615馬力、最大トルクは880Nm。搭載されるバッテリー容量は97.5kWh。0-100km/h加速はわずか3.3秒だ。もはやSUVとかクロスオーバーとか、そういうカテゴリーで語る数字ではない。日産GT-Rやランボルギーニ級の加速性能を、2.7トン近い大型BEVのSUVが普通に実現しているのである。しかも、その速さを単なる直線番長で終わらせていない。
箱根のワインディングを走らせると、このクルマが単にモーターのトルクを誇示したEVではなく、旋回性能をきちんと作り込んだスポーツモデルであることがすぐにわかる。ステアリングを切り込むと、前後の駆動力配分が極めて自然に変化し、重さを感じさせないまま車体がノーズからスッと向きを変える。しかもライントレースが非常に正確だ。
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普通、これだけ重量があるBEVでは、旋回初期でフロントの追従性が追いつかなかったり、途中で姿勢変化が唐突になったりする。ところがリリックVにはそれがない。ステアリング操作に対して、車体の動きが常にリニアで、ドライバーが意図したラインを忠実にトレースしていく。
これは単純にタイヤやサスペンションだけの話ではない。モーター制御、回生協調制御、姿勢制御、減衰力制御、それら全部を統合した電子制御の完成度が極めて高いのである。
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近年のアメリカ車、とくにGM系の高性能モデルは、その部分が本当にうまい。想定外の挙動領域に入っても、電子制御が急に介入して興ざめになるのではなく、ドライバーの感覚を邪魔しない範囲で自然に姿勢を整える。その味付けが非常に上手いのだ。リリックVも、まさにその系譜にある。