この記事をまとめると
■モナコオークションでフェラーリ仕様のベスパが約554万円で落札された
■出品されたベスパはF1パドック専用の製造わずか20台前後の超希少モデルだった
■誰がどこで使ったかが価値を決めるF1メモラビリアの世界は奥が深い
フェラーリがピアッジオに特注したベスパ
フェラーリは、全体の売上のうち11〜12%をライセンスビジネスで稼いでいるというから、跳ね馬エンブレム「カヴァリーノ・ランパンテ」を付けたアイテムはそれほど珍しいものではない。しかし、2026年4月25日にRMサザビーズによって開催されたモナコオークションに登場した跳ね馬エンブレムの赤いベスパには3万3600ユーロ、日本円にして約554万円の値がついた。
フェラーリエンブレムのベスパにはなんと約554万円の価値があった画像はこちら
いくら跳ね馬が付いているとはいえ、日本では当時新車で30万円ほどで販売されていた「125ccのスクーターに554万円は高すぎだろ!」と思ったが、その詳細を知ったら納得せざるをえなかった。出品された2001年式ピアッジオ・ベスパET4スクーデリア・フェラーリは、フェラーリのF1チームであるスクーデリア・フェラーリが、F1の各グランプリ会場のパドック内で使用するためにピアッジオに特別発注したとされる車両だったのだ。しかもその製造台数は、わずか20台ほどしかないとされている。
さらにこのベスパET4の年式は2001年。「スクーデリア・フェラーリ」の2001年シーズンといえば、ミハエル・シューマッハが全17戦中9勝を挙げてドライバーズタイトルを連覇し、フェラーリ自体も2年連続でコンストラクターズタイトルを獲得した、まさにフェラーリ最強時代の到来を決定づけた1年だったといえる。
フェラーリ時代のミハエル・シューマッハ画像はこちら
そんな八面六臂の活躍をしたシューマッハは、時間を徹底的に有効活用することでも知られており、時間節約のためにサーキットのパドック内を赤いスクーターで移動する姿が何度も目撃され幾度となくカメラにも納められている。今回の出品車両はそのシューマッハが乗っていた個体と同型・同仕様であり、スクーデリア・フェラーリに正規登録されたオフィシャルな1台だというのだから、もしかしたらシューマッハが実際に使用していたかもしれないという可能性にかけたファンが、落札するために熱くなったとしてもおかしくないだろう。
また、同車には、当時のスポンサーであったマルボロの名を冠した「スクーデリア・フェラーリ・マルボロ」名義のパドックパスが、四半世紀を経たいまも実車に取り付けられたままになっているそうだ。ピアッジオが発行した製造証明書と、フェラーリSpA名義で登録されたイタリアのリブレット(車両登録証)、そして赤いビエッフェ製ヘルメットまでセットで付属するという、まさにコレクター垂涎の内容となっていた。
フェラーリエンブレムのベスパにはなんと約554万円の価値があった画像はこちら
レーシングカーではなくパドック内を移動するためのスクーターが数百万円で取引されるというオークションにはあらためてコレクターの世界の奥深さを感じる。エンジンの排気量でも最高速でも馬力でもなく、「誰が、どこで使ったか」という歴史的文脈ですべての価値が決まるのが、F1メモラビリアの世界なのだ。