この記事をまとめると
■伝説のAMG「レッドピッグ」を再解釈したコンセプトが登場
■55年前のレースへの思い入れを随所に反映
■あくまでデザインスタディのため市販化の予定はない
「赤い豚」が現代に蘇った
自動車メーカーでデザインの責任者を務めるのは、かなりストレスフルなのかもしれません。ミリ単位の空力性能、厳格な安全基準、さらには”持続可能性”などと関係あるのかよくわからない縛りまで。メルセデス・ベンツの黄金期を支え、2026年に退任を発表したデザインの元トップ、ゴードン・ワグナー氏も、きっと心の底ではなにかとモヤモヤしていたに違いありません。すると、この「レッドピッグ・コンセプト」は彼にとって最後の反逆として、かなりスッキリしたのではないでしょうか。
レッドピッグ、すなわち赤い豚は1971年のスパ・フランコルシャン24時間レースでクラス優勝を遂げたAMG 300SEL 6.8のニックネーム。同レースに出場していたフォード・カプリやアルファロメオGTAmといったライバルたちに囲まれると、いかにも大きく重たそうなことからそんなあだ名がついたのだとか。しかしながら、当時は街のチューナーに過ぎなかったAMGが底力を発揮して、総合でワークス・カプリの3周遅れで2位をゲット。一躍AMGの名を世界に知らしめることになったのでした。
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どうやら、ワグナー氏はリアルタイムでこのレースを観戦していた模様。直線番長でタイヤと燃料を大食いする車重1.6トンのメルセデスに対し、わずか900kg前後の超軽量ボディでコーナーをヒラヒラと舞うように駆け抜けるアルファをして、「まったく異なる哲学の2台が同じ場所で咆哮を上げていた時代には熱い思い入れがある」とコメント。デカくて重い現代のEVを作らされ続けたワグナー氏にとって、55年前に野蛮なほどのパワーですべてをねじ伏せた自社の先祖と、それに対峙した軽快なアルファの姿は、あまりにも眩しすぎたのでしょう。
そんな背景を踏まえて、CGレンダリングによる「レッドピッグ・コンセプト」を眺めてみるとディテールはもちろん、全体にみなぎる熱量の高さを感じずにはいられません。たとえば、巨大なグリルと周辺に配置された補助ランプの数々や、レースに向けて省かれた前後バンパーなど、ひと口に現代風というより、ワグナー流の思い出補正がなされ、なんだかカッコよく見えてくるといったら大げさでしょうか。
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よく見るとボディに貼られたデカールにもワグナー氏の遊び心が反映されているのがわかるはず。ドアに貼られた黄色いスクエアは、オリジナルではスパのレース日程などが書かれていたもの。コンセプトではメルセデス・ベンツもデザインであることを明記しています。
また、オリジナルにはなかったカストロール風のステッカーもデザインスタジオがある都市名「Carlsbad」に変形させるなど手が込んだもの。さらに、「ROTE SAU(赤い豚)」にアレンジされているのはいうまでもなくBOSCHのステッカー。退職前のデザインスタディとはいえ、ワグナー氏ののびのびとしたクリエイティブには思わず頬が緩みます。
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このレッドピッグ・コンセプトはあくまでデザインスタディとして開発されたため、将来的にも市販化の予定はありません。現代の自動車市場において他の新規参入メーカーと一線を画すための、メルセデスらしい「歴史と伝統」を証明する象徴とのこと。そうはいっても、ワグナー氏のように古き良き時代を知っているデザイナーがメルセデス・ベンツにはまだまだいるはず。彼らが赤い豚に次ぐ痛快なモデルを送り出してくれること、楽しみに待ちたいものです。