日常領域で、少しだけど明らかに力強くなった走行性能
“ここ”とはどこか。エンジンとトランスミッション、である。いや、1.2リッター+ターボも6速デュアルクラッチトランスミッションも、ユニットそのものが変わったわけじゃない。あえてこの言葉を選ぶのだけど、“ファイン・チューン”がなされたようなもの。けれど、それが「おっ?」と感じられる違いを生み出していた。
エンジンは、おそらくマネージメント系に手が入っているのだろう。パワーはこれまでの120ps/4,900rpmから118ps/5,000rpmへと2psダウン、そしてトルクは逆に190Nm(19.4kgm)/2,000rpmから205Nm(20.9kgm)/2,000rpmへと15Nm(1.5kgm)アップを果たしている。そしてトランスミッションは、1速から3速が加速重視の方向へ、逆に4速から6速はクルージングと燃費に有利な方向へ、とギア比が改められている。
その相乗効果、である。従来型と比較すると、発進から街中での巡航速度に達する辺りまでの領域で、少し、だけど明らかに、力強さを増した印象。つまり、ごく日常的な使い方といえる範囲で、さらに軽快で走らせやすいクルマになった、と思っていただいていい。
速度を上げたらどうかというと、今回は走った速度域が限定的だったこともあって、ギア比が変わった恩恵はあまり感じられなかったが、ルーテシアはもともと高速域でも1.2ターボとは思えないほどの優れた高速巡航性を持っているクルマ。当然、不満はなかった。
それにギアのレシオを見る限り、高速巡航時にはこれまでよりエンジンの回転が低く抑えられる方向で、加えて新たにアイドリングストップ機構が備わったこともあるので、実際の日常的なトータルな燃費性能も伸びていることだろう。
ヨーロッパの自動車メーカーは手元に今あるものを熟成させていくのが概して巧みだけど、その中にあって、ルノーはピカイチ級。それをあらためて思い知らされた試乗だった。
価格はインテンスが244.8万円から239.9万円、ゼン1.2Lが221.1万円から219.9万円と、それぞれ4.9万円、1.2万円ほど安くなっている。新しいルーテシアはお買い得でもあるのだね。
(写真:佐藤正勝)