2015年度の国内新車販売でトヨタとマツダだけが「勝ち組」の理由とは

エコなパワーユニットと魅力的なSUVのラインアップが鍵

 2015年度(2015年4月~2016年3月)までの生産・販売実績が各メーカーから発表されている。リーマンショックや東日本大震災の後に比べれば株価も上がり、景気は上向いているようにも見えるが、まだまだ庶民の景況感は好調に転じたとはいえず、日本国内の自動車販売は全体としては沈んだ状態だ。とくに軽自動車税の増税による消費の先食いをしたことも、軽自動車比率の高いブランドにおいては前年比でのマイナスにつながっている。

●2015年度 自動車メーカーごと販売実績()内は前年度比

 トヨタ:1,488,679台(101.5)

 ホンダ:703,535台(89.3)

 スズキ:630,027台(83.4)

 ダイハツ:586,817台(85.1)

 日産:572,581台(91.9)

 マツダ:232,350台(103.5)

 スバル:150,814台(89.5)

 三菱自:101,924台(88.8)

※数値は各メーカー発表値

  

 上記の数字は、乗用車と商用車、登録車と軽自動車を合計したものだが、こうして見ていくと、トヨタとマツダは前年度よりも売れている。経済的な面から新車の売れ行きが減っていると言われる中で、この2ブランドが伸びている理由は、商品性によるところが大きい。

 そして、この2ブランドに共通している要素として、先進性を感じさせるパワートレインと魅力的なスタイリングのSUVが挙げられよう。

 トヨタの中では、レクサスブランドが前年度比125.1%の52,234台と売れたという。全体からすると数字自体は微々たるものだが、レクサス躍進の原動力となったのはNX、RXといったSUVであることは間違いない。

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 また、年度的にいえば貢献度は少ないが、トヨタ・ブランドでは4代目へフルモデルチェンジしたプリウスのほか、2015年7月にフルモデルチェンジしてから安定して売れているシエンタの貢献も大きいことだろう。

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 いずれにしてもハイブリッド・パワートレインを持つクルマのラインナップを拡大していることがトヨタの好調を生んでいるといえる。マツダの伸びを支えているのはクリーンディーゼルのSUV「CX-3」。その2015年度の販売実績は30,490台となり、この数字はそれまでの実績に上乗せしたカタチとなっている。

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 ここに前年度を超えて売れたデミオや、前年度並の実績を残したCX-5といったラインナップが加わることで、国内販売を伸ばしたといえる。台数ベースでは少ないが、ロードスターのフルモデルチェンジや日本カー・オブ・ザ・イヤーの受賞といったイメージアップもプラスに働く要素だ。

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 ただし、マツダについては直近の2016年1~3月の登録車販売台数で前年同期比85.3%と勢いを欠いている印象もある。自動車ブランドは、広義のデザイン力が商品性に大きく影響するものだが、2015年度の実績を見ると、商品においてスタイリングとテクノロジーをわかりやすく表現できたブランドが支持されたといえそうだ。

 そうした市場マインドは2016年度も変わっていないように感じるが、三菱自動車と日産が自社の軽自動車を一時販売停止にすることになった不正行為もあり、ブランドのあり方が再考されることになりそうだ。もちろん、こうした軽自動車マーケットのプレーヤーによる事件は、国内新車販売台数のシェアは大きく変化させることだろう。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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