世界三大レースのひとつ「インディ500」の100回大会をホンダが制す! (2/2ページ)

まさかの36周無給油作戦でロッシが栄冠!

 ただ問題だったのは残りの周回数が36周も残っていたことだ。マイレージが30周程度と計算されていただけに、ラスト数周で、燃料が足りなくなるため、スプラッシュ・アンド・ゴーのピットストップは各車必須と思われた。

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 そんななか、ムニョスは2年前に優勝を阻まれたトニー・カナーン(チップ・ガナッシ・レーシング)を蹴散らし、ジョセフ・ニューガーデン(エド・カーペンター・レーシング)を競り落として優勝を目指した。ラスト4周で予定通りピットストップを済ませると彼の前にはもう敵はいないと思われた。

 しかし、ムニョスとはまったく違う戦法で栄冠を狙ったドライバーがひとりだけいたのだ。アンドレッティ・ハータ・オートスポートwithカーブ・アガジャニアンのアレキサンダー・ロッシだ。このオフには存続が危ぶまれたブライアン・ハータのチームをアンドレッティが合併したチームで、いわばムニョスのチーム・メイトだ。ロッシもまたF1からこぼれ落ちて路頭を迷いたどり着いたチームだった。ハータは、ロッシに不可能と思われた36周のロングランに挑ませた。

 最終ラップには無線でチームから「セーブ・フューエル!」と何度も叫ばれながら、ロッシはクラッチを切り、ガス欠のマシンをゴールへと運んだ。カーナンバー98のマシンがよろよろとチェッカーを受けたとき、ムニョスはまだ後方にいた。

 アメリカ人ルーキーによる第100回記念大会制覇だった。最後のハラハラ感は2011年大会を思い出させた。あの時は最終ラップの最終ターンでリーダーのJ.R.ヒルデブランドがクラッシュし、惰性でチェッカーにたどり着く前にダン・ウェルドンが逆転し、優勝を奪ったのだ。その時のウェルドンのチーム・オーナーもハータだった。今回は逆に首位を守り切った形での栄冠だ。

 ウィナーズ・サークルではこれまで見たどのチャンピオンよりも冷静に見えたロッシだったが、その目は明らかに赤かった。

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「なにを言えばいいんだろう。ブライアン(ハータ)は信じられない作戦を取った。ライアン(ハンターレイ)はトウで引っ張ってくれ、信じられないくらい協力してくれた」と、燃費走行へのチーム・プレーを明かした。

 倒すべき相手をすべて倒しながらチームメイトと呼ぶべき相手に敗れ、2年前に続く2位となったムニョスの涙も止まらなかった。

 今季これまでの5戦すべてでシボレーに敗れてきたホンダ・エンジンだったが、この大一番では燃費もパワーもアピールし、ワンツー・フィニッシュで飾った。

 (Photo:Naoki Shigenobu)


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