【試乗】走りの楽しさと実用性とエンタメと三拍子揃ったルノー カングーS MT (1/3ページ)

究極の実用車といえるカングーの使い勝手

 ルノーカングーは間違いなく世界最高峰の超オシャレな超実用車である。

 ルノージャポンによる全モデルの販売台数のなかで、内訳の多くを占めるカングーは、その熱狂的なファンの多さから、毎年、世界一のカングーのお祭り!「ルノーカングージャンボリー」を開催。2017年は山梨県山中湖村にある“山中湖交流プラザ きらら”で開催され、1243台ものカングー、4226名の参加者が全国から集結。爽(さわ)やかな春の陽気のなか、フレンチスタイルの1日を目いっぱい楽しんだ。

 カングーの超実用性はまず、その広大な室内空間にある。身長172cmのドライバー基準で前席頭上に35cm! 後席の頭上に28.5cm、膝まわりに19cm(大型SUVに匹敵)ものスペースがある。 

前席はアップライトでいすのような、分厚い座面、実際のシート長より長く感じられる絶妙なシート先端の形状、同じく分厚く、背中を包み込むような心地よさある背もたれが特徴だ。そして、前席同様に高めの位置にセットされた後席は、シート幅が実測で137cmと大型セダン並みにあり、フロアから座面までの高さがあるため、とくに降車性(立ち上がり性)に優れるのがポイント。

 乗員やペットの乗降性に優れるのも超実用性の一端。両側スライドドアステップの地上高はごく低く、子供はもちろん、シニア、小柄な犬でも楽々乗車可能。

 カングーが究極の実用車であるゆえんは数多いが、まず紹介したいのが、使って楽しいダブルバックドアである。左右に2段階で開くため、狭い場所でも開けやすく、また上下開きと違い、一気にガバッと大きく開かないため、荷物やペットの飛び出しにも効果絶大。ペットモデル事務所やブリーダーがカングーを愛用するのはその機能があるからでもある。

 ちなみにラゲッジの開口部地上高は世界のステーションワゴンの平均値約62cmを大きく下まわる約54.5cm。段差のない掃きだしフロアで、重い荷物の積載、ペットの乗降もじつにスムースに行える。

 そしてキャビンの前席頭上にあるトレー状のオーバーヘッドコンソール、後席頭上の3連式で奥に区切りがないため長尺物も積み込めるオーバーヘッドボックス(容量24.4リットル)の使い勝手も抜群だ。さらに後席フロアにも隠し(!?)収納があるから、ドライブに必要な小物の置き場、収納場所は多彩かつ十二分。前席にはUSBソケットもあり、ドライブ中にスマートフォンなどを充電することもできる。

 子供連れ、ペット同伴のドライブシーンで活躍するのがルームミラー上に設置される小さなチャイルドミラー。前席から後席、後席を倒して拡大したラゲッジスペースの様子を確認できるから、お互いに安心である。

 そんなルノーカングーに、今夏加わった限定車(60台限定)がルノーカングーS MTだ。カングーには2ペダルのセミAT=6速EDC、4速ATも用意されるのだが、フランス車ファンの多くに「マニュアル派」がいるのも事実で、それに応えた、フレンチスタイルのドライビングを楽しむためのレアな1台となる

 ベース車両は115馬力/19.4kg-mを発揮する1.2リッターターボエンジンを搭載するルノーカングーゼン6速MT。それにルノースポールF1チームにもホイールを供給しているO・Z製15インチアルミホイール、マルチルーフレール、そしてフランスが産んだハイクォリティオーディオメーカーの「FOCAL」製の“FOCAL Music Premium”サウンドシステムを特別装備する。

 さて、ルノーカングーS MTを走らせてみよう。クラッチは軽めで、ミートポイントがじつにつかみやすく、エンジンは低回転域から有効なトルクを発揮するため、MT初心者でも楽々発進することができる。このあと紹介する自然なドライビングポジションもそうした運転のしやすさに貢献している印象だ。

 最初に言ってしまえば、その走りっぷり、ルノーのスポーツモデルとは別種の、しかし感動に値するものだった!


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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