【意外と知らない】自動車エンジンの「気筒休止システム」って何?

ピストンは動いているが何気筒かの燃焼を休止させる省燃費技術

 エンジンの省燃費技術のひとつで、日本でもホンダがかなり積極的にやって来ました。実際にいくつかのモデルのエンジンに採用されていたので、乗ったことがある人もいることでしょう。シビック・ハイブリッドやインサイト、インスパイヤーやレジェンドなど、いろいろとありました。世界的に見ればエンジンの気筒数が多いアメリカが主流だったのですが、現在はフォルクスワーゲングループが1.4リッターのダウンサイジングターボにも採用しています。

気筒休止

 V8やV6の場合には、一般的には片側のバンクを休止させます。また直列4気筒の場合には、2気筒を休止させます。そうすることで燃費を良くするのです。気筒休止という文字からは、なにやらピストンが上下せずにお休みするようなイメージがしますが、それは勘違いです。ピストンはちゃんと動きますが、吸排気バルブが動きません。バルブは閉じた状態で固定化されるんですね。その結果新しい空気を燃焼室に取り込むことができず、燃焼できないわけです。休止するのは燃焼というわけなんです。

 ちなみにホンダの場合には、V6は3気筒モードと4気筒モードがあり、直列4気筒の場合は3気筒休止や4気筒休止もありましたね。幻のフロントエンジンNSXにも、550馬力のV10エンジンに片バンク気筒休止が装備されていました。GMやクライスラーがやっていたアメリカンなV8の気筒休止ですが、片バンクだとアンバランスが出るので、きっとブルブル振動していたことでしょう。

 高速道路でのクルージングが中心になりますが、パワーが必要ない時に、エンジンの半分のシリンダーの燃焼を休止させるわけです。つまりエンジンの排気量を小さくすることで、燃費を良くしようというメカニズムなのです。もちろんパワーが必要な時はアクセルを踏み込んでやれば、すぐさま本来の排気量に戻すことができます。ダウンサイジングターボと同じ論理ですね。つまりは現在、フォルクスワーゲンの1.4リッターTSIブルーモーションには、その両方が入っているというわけです。

 吸排気バルブは閉じたままで空気の出し入れがないので、ピストンは圧縮と膨張を繰り返すことになります。空気は圧縮すると反発するので、休止しているシリンダーはフライホイール効果が出ます。それが直列4気筒のような、半分にすると直列2気筒になってしまうバランスでも、意外と振動が出ない理由でもあります。

 ピストンは休んでいないので、機械的な抵抗は残ります。それでも見かけの排気量が半分になるので、稼働しているシリンダーではパワーをしっかりと出す必要があります。ポンピングロスといいますが、パワーを上げるには多くの空気を吸う必要があり、シリンダーの吸気抵抗が少なくなるので、エンジンの効率が高くなるのです。

 ダウンサイジングターボは気筒数を減らすことができるというメリットはあるものの、ターボなどの装備が高価になります。それに対して気筒休止なら比較的格安に装備可能ですが、出力は高くならないので、コンパクトカー向けということになりますね。


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