混戦のMクラスミニバン2番手争い! ホンダ・ステップワゴンが日産セレナを逆転した理由とは?

自動運転技術「プロパイロット」を搭載したセレナを逆転

 5ナンバー(小型車)サイズを基本とした3列シートのスライドドア・ミニバンは、日本の自動車市場を象徴するカテゴリーのひとつだ。具体的には、トヨタ・ヴォクシー/ノア/エスクァイア、日産セレナ、ホンダ・ステップワゴンの3メーカー6車種が覇権を競っている。

 かつてはセレナがトップランナーだったが、トヨタが2モーター・ストロングハイブリッドを登場させたことにより勢力図に変更あり。以来、ヴォクシーが人気ナンバーワンの座についている。

 2017年度上半期(4~9月)のデータ(自販連発表値)を見ても、それは明白だ。

 ヴォクシー   39,988台(全体順位9位)

 セレナ     37,503台(同10位)

 ノア      29,489台(同16位)

 エスクァイア  20,038台(同24位)

 ステップワゴン 18,984台(同25位)

 ヴォクシーとセレナが競い合っているようにも見えるが、トヨタの三兄弟を合計すると89,515台と6割を超えるシェアを誇っている。

 しかしながら上半期のデータを見る限り、このカテゴリーに「乗用車ベース」という発想を持ち込んだステップワゴンはライバルに大きく遅れを取っているのが気になるところだ。

 その理由はいろいろ考えられるだろうが、上半期の段階(マイナーチェンジ前)でのステップワゴンはVTECターボだけの設定であり、リヤドアが横開き&縦開きに使える「わくわくゲート」という特徴があったとしてもライバルの魅力に追いつくほどのキラーデバイスとはなっていなかった判断するのが妥当であろう。

 逆に、ライバルが売れていた理由としては燃費に優れた1.8リッターフルハイブリッドの設定(トヨタ)、高速走行をアシストする自動運転技術の搭載(日産)といった要素が挙げられるだろう。

 また、ヴォクシーが人気を集めている理由として、大きなグリルなど迫力あるフェイスが、このカテゴリーの中で自己主張をしていることも見逃せない。

 しかしながら、トヨタが過半数を占め、ステップワゴンが遅れを取るといった状況は2017年の秋に一変した。

 最大の要素はステップワゴンのビッグマイナーチェンジだ。カスタムバージョンといえるステップワゴン・スパーダはLEDヘッドライトや大型グリルによりフロントマスクを大幅に変更。トレンドのド真ん中といえる迫力ある顔に変身した。

 さらに、エネルギー効率の面でライバルを圧する2リッターハイブリッドをスパーダに設定。ボディを引き締めるなど、パフォーマンスとエフィシェンシーの両面でライバルをリードする存在となった。

 加えて、ホンダの先進安全装備「ホンダセンシング」を進化させ、ハイブリッドでは渋滞対応のACC(追従クルーズコントロール)を新設定した。なりふり構わずライバルをキャッチアップしてきたといえる。その効果はダイレクトに数字に現れた。

 2017年11月の車種別販売ランキング(自販連調べ・速報値)から、このカテゴリーのミニバンをピックアップすると以下の様な順番になる。

 ヴォクシー   6,111台(全体順位10位)

 ステップワゴン 5,032台(同13位)

 ノア      4,759台(同14位)

 エスクァイア  3,726台(同20位)

 セレナ     3,192台(同21位)

 完成車検査における不祥事による、ブランドイメージの低下などにより日産の販売が全般的に苦戦しているという事情もあるが、ステップワゴンがクラス2位に躍進した。ホンダの努力は実を結んだといえる。そして、ステップワゴンの売れ行きは、このカテゴリーにおけるユーザーニーズが、ストロングハイブリッドにあることも示している。

 東京モーターショーにおいて日産は、セレナに2018年春には2モーターハイブリッドである「e-POWER」を設定することを明らかとしている。そうして3社がストロングハイブリッドのパワートレインを用意した段階で、またゼロスタートの競争が始まるのかもしれない。そのときにはACCの機能差が明暗をわけることになるのだろうか……。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

愛車
スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
趣味
モトブログを作ること
好きな有名人
菅麻貴子(作詞家)

新着情報