現金配布に命がけのプレスキット争奪戦! 新興国モーターショー衝撃のカオスっぷり

ペンやメモ帳などのちょっとしたお土産目当てに殺気立つプレス

 筆者は年に数回世界のオートショーの取材へ出かけるが、その多くは新興国と呼ばれる地域。そこで開催されるオートショーは先進国で開催されるような、マナーやモラルに守られたシステマチックなものとは異なり、ショー会場内でも、無法地帯ともいえるカオス的な場面に遭遇できることに楽しみを感じている。

 中国のオートショーでは、地元メディアへ会場内で現金が渡されていたことはご存じの方も多いはず。筆者もメディアデーでプレスカンファレンス開催時の受付で実際に現金のやり取りが行われているのを目撃したことがある。受付にある受け取りを記録する書面にサインをすると、赤い100元札が透けて見える封筒が渡されていたのである。

 汚職撲滅を掲げる習近平体制になってからは、さすがに露骨な現金のやりとりは行われていないが、かなり高価そうなお土産のやりとりが続いているようだ。

 インドネシアでは事前にプレスカンファレンス出席の受付を済ませると、お土産と交換できるバウチャーが渡される。そしてプレスセンター近くの、“お土産交換所”で現物と交換することとなる。メーカーによって中身はまちまちだが、携帯電話充電用の外部電池やメーカーロゴ入りキーボードなど、見栄えの良いものが入っていることも多い。

 そしてインドで開催されるデリーオートエキスポでは、筆者が訪れたオートショーのなかで、唯一ニュースリリースなどのプレスキットをもらうときに、“命の危険”を感じるようなやり取りが行われるのである。ちなみに世界共通ルールとでもいえるのだが、プレスキットの配布は当該メーカーのプレスカンファレンスが終了した段階で配布が始まる。

 デリーオートエキスポでは、用意されたプレスキットすべてにお土産が入っている(数量は少なめ)。ボールペンやメモ帳など、まさに記念品程度のものなのだが、事前登録などはなく、早いもの勝ちで配られるので、このプレスキットをゲットしようと、各メーカーの配布場所はまさに殺気みなぎる空間となる。もともと日本人のように整然と並ぶなどということは不可能なので、配布する側もとくにそのようなことは行わない。

 プレスキット配布が始まると、まさに押すな押すなの大騒ぎ。名刺との交換がお約束なのだが、配布担当者の気を引こうと、「こっちによこせ!」などという怒号が飛び交うカオスな空間がそこにでき上がる。

 “物は試し”とばかりに筆者も果敢にチャレンジするものの気合負けすることもしばしば。今回はホンダとタタ、トヨタでチャレンジしたが、1勝2敗に終わった(タタのみ成功)。トヨタではあまりに殺到したため、セキュリティサイドが“危険”と判断し、配布禁止の指示が出たほど殺気だった。一方タタでは、配布カウンターがガラスのショーケースで囲まれていたのだが、あまりに背後から押されたためにガラスが“ミシミシ”と言い始めた。

 まさに死ぬ思いでゲットしたプレスキットも、お土産を抜き取られた“残骸”が周囲に多数捨てられている。筆者も面倒くさいときには残骸のなかにはたいがいリリースなどが残っているので、恥を忍んでゴミを漁ることもある。

 今回はスズキがプレスカンファレンス会場の入場をメディア関係者などに厳格に絞り込み、座席へすでにリリースとお土産が置かれていた。さすがに一部メーカーはこの危険なプレスキット配布を見直そうという動きも見られた。

 一緒になってキット争奪戦に参加するのは楽しいがやはり面倒くさい。そのような光景が見られなくなるのは寂しいのだが、抜本的な改革が必要かもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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