最悪自己破産のケースも! 新車購入で流行の「残価設定ローン」に潜むリスクとは (2/2ページ)

万が一のことを考えて車両保険には必ず加入しておきたい

 もうひとつ残価設定ローンが主流となった理由には、金利の低さがある。日系ブランド系のディーラーでは2.9%あたりが一般的で、高いところで3.9%、低いところで1.9%というのを期間限定で設定したりしている。単純にファイナンスで利益を出すには4%ぐらいが限界ともいわれているので、現状の残価設定ローンの金利設定は、ディーラーやファイナンス会社が新車販売支援のためにコスト負担をしていることになる。

 ここまで見てくると良い事ばかりに思える残価設定ローンだが、気をつけたいことも多々ある。まずは販売サイドが顧客の囲い込みを狙っていることからもわかるとおり、一度残価設定ローンを組んで新車を買うと、他メーカーへの代替えが難しくなってしまうのである。

「借りたものは返すのが当たり前」とよく言われるが、こと残価設定ローンの世界に限って言えば、返済途中で代替えするケースも目立っている。これは現状で設定される残価率が、安全マージンをやや読みすぎたものが多く、低めとなっているためだ。

 たとえば36回払いでローンを組んだ場合では、30回ほど払った段階で下取り査定に出し、下取り査定額で残債を整理しても、お釣りが手元に残り、そのお釣りを次の新車購入資金の一部に充当することも可能となるのである。そのためセールスマンも支払い途中での代替えを勧めてくることが多く、実際ローンを組んでいるのに、初回車検前に代替えに至るケースも多いと聞く。

 ただし、このような支払い途中での代替えは、過去には同一メーカー車への代替えにのみに許されていた。もともと支払い途中に代替えする場合は、オーナー自身が現金を用意して残債整理を行い、車検証上の所有権解除手続きを行わなければならなかった。しかし、まず同じメーカー車への代替え、つまり多くは同じ店で代替えするならば、支払い途中でもスムースな代替えが行えるようになった。

 そして今では、他メーカー車でローンが支払い途中であっても下取り査定を行い、査定額で残債整理ができるケースが増えてきている。その意味では昔ほど囲い込みの効果は薄れているのだが、設定された残価率が高めだと他メーカー系ディーラーへ下取りに出せば、それだけの査定額が出ることは少ないので、多額の追い金が発生してしまう可能性が高まるのである。残価率が高いことは手放しでは喜べないのだ。

 さらに気をつけてもらいたいのが、まとまった額を”最終回の支払い”に据え置く事になるので、支払い回数を重ねても、残債が思ったほど減らないことになる。そのタイミングで事故を起こして全損扱いになると、車両はとりあえず解体処分するものの、残債整理ができないかぎりは抹消手続きが行えないのだが、残債整理ができずにクルマはなくなったがローンの支払いだけが残るというケースが発生することもあるのだ。

 車両保険に入っていれば保険金で整理することも可能だが、車両保険に入っていなければ愛車は解体したがローンだけが残り、結果としてナンバープレートだけ自宅などに飾り、ローンの返済を続けているというひとも結構目立つとのことである。そのため気のきくセールスマンは、残価設定ローン申し込み時に車両保険への加入を勧めるそうだ。

 また残価設定ローンが台頭するようになると、“借り換え”もかなり広範囲で可能となってきている。借り換えとは、今乗っている愛車のローンの残債を、入れ替え予定の新車購入のために組むローンの元金に上乗せして、返済を続けることになるケース。

 この時点ですでに債務超過となっており、これを数回繰り返して新車への代替えを続けた結果、債務超過が限界を超えて自己破産するに至ったというケースもそんなに珍しくないとのことである。この借り換えは新車販売の世界では“ご法度”とされてきたのだが、最近ではメーカー系ファイナンス会社の審査でも平気で通るようになっているとのことである。

 それでは通常ローンのほうがいいのかというと、残価設定ローンがさまざまな導入効果をねらい、金利をかなり低めにしている一方で5%以上もざらという高めの金利設定となっているので、残念ながらメリットがかなり薄いのが現状となっている。

 何かとメリットばかりが目立つ残価設定ローンだが、使い方を誤るとかなりリスキーなものとなるのも確かなので、利用に際しては慎重に検討してもらいたい。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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