北京モーターショーでみた「中国一般人」の熱気! 会場に押しかける情熱は10年変わらず

コネを駆使して通常は入れないプレスデーに来場する強者も多い

 “中国三大モーターショー”といわれる、北京、上海、広州ショーでの取材経験も10年を超えようとする筆者だが、これらのショー会場となる各コンベンションセンターはハンパではない面積の規模となっている。

 ところが、今回、北京ショー会場で出会う知り合いの日本人メディア関係者と話題になるのは、「今年は各メーカーブースが狭いよね」であった。コンベンションセンター自体はかなり広いのだが、確かに各メーカーブースには“手狭なイメージ”が目立っていた。

 2016年に開催された前回の北京ショーでは、それまで9つあった展示棟のうち、1棟まるごとフォルクスワーゲングループで占められていた、通称“フォルクスワーゲン村”がなくなり、9棟から8棟となりフォルクスワーゲングループがそのなかで新たにブースを構えたので、その時点でも「かなり狭くなった」という声が多く聞かれていた。

 ある事情通は「『なんでフォルクスワーゲングループだけ優遇するんだ』と関係各方面から主催者サイドへクレームが殺到したことも影響していると聞いています」とのことであった。

 そして今回さらに手狭なイメージが目立ったことについては、ここ最近は既存の中国民族系メーカーが新たなブランドを立ち上げたり、まったく新しいブランドができるなど、出展者数自体の増加傾向が目立っていることが大きく影響しているようだ。新たなブランドの多くはEVを主体にしているところも多く、政府がEVに重きをおく背景もあり、出展場所も結構目立つ場所となっている。

 まだ完成してそんなに経っていないコンベンションセンターなのだが、建設を急いだのか、オープン当初から雨漏りやネズミが徘徊するなど、ある意味問題だらけでもあった。そこへ会場の手狭なイメージも目立っているので、ひょっとしたら2年後には新たな巨大コンベンションセンターを建設して、そこへ会場が変更されているかもしれない。

 また今回ならではの傾向としては、スーパーカーや超高級ブランドのブースが分散化されたこと。北京だけでなく、上海や広州などでも同じなのだが、いくつかわかれる展示棟のうち1棟はスーパーカーや超高級ブランドのブースを集中的にレイアウトしていた。プレミアムブランドもブースを集中させる傾向が強く、日本からの輸出モデルのみのラインアップで高級イメージが定着しているスバルも、このあたりにブースを構えることで目立っていた。

 ただプレスデーからして、このようなスーパーカーやプレミアムブランドの展示棟は来場者が殺到しており、一般公開日には満員電車に近い混雑になるともいわれている。逆に実用車メインの中国民族系メーカーなどは来場者があまり近寄らない傾向も目立っており、主催者としてはスーパーカーや超高級ブランドの展示ブースを分散化することで、場内の混雑の分散化もはかろうとしているようだ。中国ということもあり、スリや置き引きなどの犯罪の温床にもなってしまうので、混雑の分散化はその面でも進めたいようである。

 筆者が中国のモーターショー取材に出かけるようになった10数年前はまだまだマイカー保有率も低く、モーターショーの会場内は一般庶民から見れば“夢の世界”であり、チケットも持っていないのに、“とりあえず”とモーターショー会場周辺には多数の人が集結して、何やら殺気立っていたのを今も覚えている。

 ときは変わりマイカー普及率もかなり高まり、マイカーでモーターショーへ出かけることも珍しくなくなった今でも、日本がバブル経済に浮かれていたころの絶頂期といえる東京モーターショーのごとく、人気の高いイベントとなっている。そのため“われ先に”と、地元ディーラー関係者など“コネ”を駆使してプレスデーであっても、多数(かなり多い)の一般人がショー会場内で見学をしている(プレスデー初日には限定でチケットも販売される)。

 カップルはもちろん、幼い子どもを連れた家族連れなど(お爺ちゃんやお祖母ちゃんなど親子3代連れも目立つ)、そもそもプレスデーの会場内で多数見かけること自体問題のような気もする。しかし、そこは中国ということもありすでに諦めているが、そこまでしてもモーターショーへ行きたいと思う一般人の多さを見ると、“クルマ離れ”の激しい国からきている筆者のような立場では、なんだか羨ましくも思えてしまう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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