カタログ数値はあてにならない! 本当に燃費のいいエンジンとその見分け方

2000rpm未満のアクセルペダルに対する反応が重要

「広告に載ってる燃費は、全然出ない」、というような不満を持っている人も少なくないようですね。しかし、それは無理もないことです。そうしたカタログ燃費は、ある一定の走行モードを走った時の燃費データであって、皆さんが実際に使用している走行状況とは合致しないからです。それで、結局は「カタログ燃費の60〜70%」くらいが、実際にクルマを使ったオーナーの実燃費というような雰囲気になっていますね。それが100%になる可能性は、まず考えられないことです。

 現在のカタログ燃費というのは、単なる宣伝文句というだけでなく、それをベースとしたエコカー減税制度が存在するので、税金に関わるデータになっています。最近も自動車メーカーによる燃費データ偽装が問題化していますが、それは「ユーザーに誤った性能を伝えた」という道義的責任だけではなく、事実上「ユーザーを脱税に巻き込んだ」という社会的責任が存在するわけです。日本のエコカー減税制度は、エコカーを増やすというよりも、エコカーへの買い換えを促進するように機能しています。つまりカタログ燃費は支払う税金を少なくするための免罪符なのです。

 ではシンプルに実燃費のいいエンジンとは、どんなものでしょうか? 結論から先に言ってしまえば、低回転域がしっかりと使えるエンジンです。現在のエンジン技術では、1300ccクラスのエンジンでも、2000rpm以下だけで走行することは難しくありません。これは日本のクルマの流れが悪く、加速は遅く、速度も低いという最近の傾向にも助けられている側面はあります。しかし燃費を高めようというエンジニアの技術開発が、結果として低回転域でのトルクを引き上げたのは間違いないでしょう。

 エンジンの効率でいえば、2500〜3500rpmくらいの領域に熱効率のピークがあります。しかし最大効率は全負荷に近い領域、つまりアクセル全開で加速も減速もしないような状況で発揮されます。そういった状況が現実とかけ離れているのは、実際に運転している人は理解できると思います。

 現実ではそんなにパワーは必要ないので、もっと低い回転でユルユルとエンジンは使われるのです。現代の技術ではガソリンエンジンの効率は40%を超えていますが、実際に使われる2000rpm以下の領域では半分以下、つまり15〜20%程度になります。その数値もエンジンの回転が変動している状況では、さらに低下します。

 では、そうした領域での部分負荷の熱効率がわかれば、実燃費が見えてくるのか? 答えはNOです。それもまたモード燃費と同じようなものです。問題は計測される熱効率よりも、実際に人間が操作していく中でどういった稼動状態になるのか? それが重要なんですね。たとえば平坦な道を一定速で走っていて、登り坂に変わったとします。その時にドライバーはアクセルペダルを踏み増すことになりますが、その登り坂に対して過不足のない最適な量が踏めるのか?

 MT以外のクルマではアクセルペダルの踏み込み量は要求トルク量と判断します。低速トルクに欠けるエンジンではシフトダウンして、エンジンの回転数を上げることで対応せざるを得なくなります。当然、その瞬間の燃費は大幅に悪化しますね。そういうエンジンが良い実燃費を出すことはありません。

 次に、低速トルク自体はしっかり確保できていて、エンジンの回転数は上げなくても十分だとしますね。ここで、そのトルクの出方が問題になります。アクセルペダルの操作に合わせてリニアにトルクが出てくれればいいのですが、遅れてトルクが出てくる場合にはドライバーが最適な踏み込み量を出すことが難しくなります。これを応答遅れといいますが、ディーゼルエンジンやトヨタのハイブリッドシステムでは、この傾向がとても強くなっています。

 応答遅れがなくリニアにトルクが出てくれれば、その瞬間瞬間の速度変化を感じて、ドライバーは最適なアクセルペダルの踏み込み量を決めることができます。しかしリニアではない場合には、ある程度予測する必要がありますが、それがなかなか上手くいかない。

 結果としてトルクが少なすぎた場合、ドライバーはさらにアクセルペダルを踏み込むことになりますが、クルマはもっと大きな駆動力が要求されていると判断して、巻き返すためにより大きなトルクを出そうと制御します。逆にトルクが大きかった場合は、ドライバーの想定よりも加速が強かったので、アクセルを戻すことになりますが、タイミングと量を間違えると失速してしまい、再加速することになります。そうしたアクセル操作を繰り返して、無駄なエネルギーを使い、燃費が悪くなってしまうわけです。

 つまり実燃費の良いエンジンというのは、1000rpm台がしっかりと使えて、なおかつ、その領域でのアクセルペダルの小さな操作への応答性が高いことが、必要条件なんですね。高効率をアピールされても、そこから外れたとたんに効率ガタ落ち、というようなエンジンでは実燃費は良くならないんです。リアルワールドでは通用しないんですね。

 実例を挙げてみましょう。スバルの水平対向エンジンは低回転域が苦手です。それでインプレッサでは1.6リッターと、2リッターが実燃費では同等です。これは2リッターが直噴という差もありますが、低回転でのトルクがあるから排気量の差を埋められるんですね。

 マツダのスカイアクティブGも低速トルクが不足気味です。デミオではガソリンの1.3リッターMTよりも、1.5リッターMTの15MBのほうが実燃費は上です。これは両方直噴ですが、1.5リッターはハイオク仕様で低回転でのトルクが大きく向上しているためです。

 本当の燃費を重視したいのであれば、カタログの燃費表示なんて気にせずに、試乗する時に低回転域でのドライバビリティをチェックするべきです。1500rpmくらいの一定速から1cmだけアクセルペダルを踏み増してみる、さらにもう1cm踏み増してみる、そこから1cmだけ戻してみる。そうした動きにしっかり追従してくれれば、あとはドライバーの貴方の運転が上手ければ良い燃費が出せることでしょう。


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