人気カテゴリー国産SUVの6車種「勝ち組」「負け組」とその理由

大人気SUVといっても月販100台を切る車種も存在する

 最近はSUVの売れ行きが好調だ。ボディの上側はワゴンや5ドアハッチバックの天井を高くしたような形状だから、4名が快適に乗車できて荷物も積みやすい。下側は大径のタイヤを装着して存在感を強め、実用性とカッコ良さの両立がSUVを人気のカテゴリーに押し上げた。

背景にはミニバンから乗り替える需要もある。子育てを終えると、ミニバンの3列目のシートや大容量の荷室は不要だが、広い車内に慣れているから天井の低いセダンやワゴンには乗り替えられない。そこで開放感や実用性が備わり、内外装がスポーティなSUVを選ぶ。

乗用車系のプラットフォームを使ったSUVは床の高さが適度で、乗降時に腰の上下移動量が少ない。乗り降りがしやすいことも、中高年齢層のユーザーに好評だ。今はかつてスポーティカーを乗りまわしたクルマ好きの世代が高齢化したから、SUVが好まれる。

2000年以降に、メルセデス・ベンツやBMWのような欧州ブランドのSUVが増えたことも人気の要因だ。以前の欧州ブランドは、SUVの高重心が走行安定性を妨げることから、開発に消極的だった。それが2000年を過ぎると北米の需要が強まり、技術的なメドも立ったことから欧州製のSUVが急増した。この動きが日本でも、SUVのイメージアップに繋がっている。

 ただしSUVのすべての車種が好調に売れているわけではない。その違いを見ていきたい。

勝ち組

●ホンダ・ヴェゼル

 SUVは乗用車のプラットフォームを使うシティ派と、悪路向けに専用の設計が施されたオフロード派に大別される。

 1980年代までのSUVはほとんどすべてオフロード派で、後輪駆動をベースにした4WDと、悪路で駆動力を増強させる副変速機を搭載した。そのために悪路の走破力は高いが、車両重量が増して高重心になり、舗装路では走行安定性、乗り心地、動力性能、燃費などで不利になる。さらに床が高いために、乗降性や居住も悪化しやすい。そこでオフロード派は売れ行きを落とし、今日の売れ筋SUVは前輪駆動の乗用車系プラットフォームを使うシティ派となった。

 この中でも特に人気の高い車種がホンダ ヴェゼルだ。2017年(暦年)の登録台数は、1カ月当たり約5400台で、コンパクトカーのトヨタ タンクなどと同等だった。

 全長が4400mm以内に収まるコンパクトなSUVだが、燃料タンクを前席の下に搭載して、前後席の居住性は全長が4600mm前後に達するミドルサイズ並みだ。荷室の床が低いために積載性も優れ、外観もバランスが良い。実用的でカッコイイSUVの特徴を押さえた。

 エンジンは1.5リッターで、ハイブリッドも用意される。ノーマルエンジンの2WD・Xホンダセンシングの価格は216万5000円と安く、売れる要素を豊富にそろえて人気を得た。

●トヨタC-HR

 コンパクトなSUVで、後席はとくに広くないが、外観を5ドアクーペ風に仕上げた。従来のSUVとは異なる個性的なデザインが特徴だ。

エンジンは1.2リッターターボと、1.8リッターハイブリッドを用意した。先ごろターボにも2WDが追加され、S-T・LEDパッケージの価格は234万6000円だ。ヴェゼルほど買い得ではないが許容範囲に収まる。トヨタの全店(全国に4900店舗)で買えることもメリットだ。

また個性的になったプリウスの外観が好みに合わず、C-HRを選ぶユーザーも多い。2017年には1カ月平均で約9800台を登録し、SUVの最多販売車種となった。

●マツダCX-5

 海外向けに開発されたミドルサイズのSUVだが、2.2リッターのクリーンディーゼルターボを搭載して動力性能と燃費が優れ、走行安定性と乗り心地も良好だ。

 内装の質も高く、後席の居住性はマツダアテンザワゴンよりも広くて快適に仕上げた。安全装備も充実して人気を高め、2017年の登録台数は1カ月平均で約3500台に達する。ミドルサイズでは好調に売れている。

負け組

●三菱パジェロ

 オフロードSUVの代表車種で、初代モデルは1982年に発売されてヒット作になった。従来は作業車だった4WDを、個人ユーザーも購入できるレジャー向けのカテゴリーとして認知させた。


ただし1990年代の中盤以降は各社がシティ派SUVを発売して人気を高め、パジェロはユーザーを奪われた。1999年に発売された先代型はボディが大幅に拡大され、売れ行きを一層低迷させている。現行型も発売から11年以上を経過しており、1カ月の登録台数は70〜90台と少ない。

●日産ジューク

 1.5リッターエンジンをメインに搭載するコンパクトなSUVで、2010年の発売直後には、好調に売れて人気車となった。

 しかし今では約8年を経過して、売れ行きを下げた。単眼カメラをセンサーとして使う緊急自動ブレーキを追加するなど商品力を高めたが、1カ月の登録台数は400〜500台にとどまる。

●スズキSX4Sクロス

 1.6リッターエンジンを搭載するコンパクトなSUVで、ハンガリーで生産された車両を輸入している。同じスズキのエスクードもハンガリーで生産され、共通のプラットフォームを使うが、高速域でも作動する車両対応の緊急自動ブレーキを装着した(カメラが付かず歩行者は非対応)。


ところがSX4Sクロスには、緊急自動ブレーキが一切採用されず、アイドリングストップも付かない。その割に価格が高い。しかもマイナーチェンジでメッキグリルが大型化され、デザイン的なバランスも悪化させた。1カ月の登録台数は120〜150台にとどまる。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
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