【試乗】新型1.8リッターディーゼルを採用! 質感を大幅に高めたマツダCX-3の実力を試す (2/2ページ)

排気量をアップしながら従来と変わらぬエンジン重量を実現

 そのエンジンにも大幅な改良が施された。従来は1.5リッターターボだったボア×ストロークを変更し、1.8リッターにスープアップしたのだ。だがシリンダーブロックやクランクケースなど、エンジンサイズは変わらず重量も増えていない。クランクシャフトやコンロッドなどのパーツを見直し、軽量化したことが奏功している。

CX-3

 1.8リッターとなったことで極低回転域でのトルクピックアップが向上。EGRの領域を拡大し、よりクリーンな排気ガス性能とすることができた。またCX-8で採用しているピエゾインジェクターをも取り入れて燃焼コントロールをより高度に実現。実用燃費が向上している。またDPFのクリーンアップ機能を向上させるなど実用燃費向上についても「そこまでやるか!」と思わせる。

 走りだせばトルクアップによる機動性の高まりが手に取るようにわかる。大型化されたターボチャージャーと排気量アップによるトルクの繋がりが自然で、従来感じられたピックアップのヘジテーション(ためらい感)は格段に改善され走りやすい。CX-3には6速マニュアルトランスミッション車も用意されているが、今回の年次改良でも引継がれた。MTと新エンジンは相性抜群で、2速発進も可能なトルクとレスポンスの向上でキビキビと走れる。
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 さて、次に確認すべきはハンドリングと乗り心地だ。ハンドリングを司るサスペンションの改良も半端ではない。スプリングレートを見直して若干柔らかいスプリングを装着。スタビライザー径も下げて適度なロール感を狙いつつ、路面からの突き上げ入力を抑えようとしている。

 このままでは車体姿勢が不安定になってしまうが、前後ショックアブソーバーの外形を大径化し、減衰特性を煮詰めて適合させている。フロントストラットではアブソーバーケースの外径を45ミリから51ミリに拡大。それによりショックアブソーバー内のピストン径も30ミリから32ミリとなり、減衰力向上と好応答性を得ている。
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 リヤダンパーも外径38ミリから45ミリへと拡大。ピストンは25ミリから35ミリへと変更されているが、実物を見るとまるで別物のハイクオリティなショックアブソーバーへと進化している。さらに、リヤショックアブソーバーのアッパーマウントに、アルミダイキャストにシリコンブッシュを複雑に埋め込んだ特許品を使用。CX-8に装着され、後席の乗り心地を圧倒的に高めた重要機能パーツがCX-3にも拡大採用されたわけだ。
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 試乗コースでは路面の継ぎ目や段差の通過時など、コンパクトクラスとは思えないNVH性能を実感した。乗り心地に対するこだわりはサスペンションだけに収まらず、タイヤにもおよんでいた。タイヤは路面の衝撃を最初に受ける部分だから、そこで減衰できれば車体への入力を抑えることができる。だが、タイヤのサイドウォールを柔らかくすると操縦安定性に悪影響してしまう。そこで、トーヨータイヤと共同開発し、タイヤショルダーを柔らかくしトレッドベースに1プライを増した特殊構造のタイヤとしたという。
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 NVH性能の向上は、後席に同乗したスタッフからも良好な意見が出された。だがハンドリングに関してはどうだろうか。市街地の試乗速度では快適さが全面に出され、「これでいい」と思ってしまうが、少しコーナー部分を攻めると、ロール感やロール量が最適かは少し疑問が残る。ワインディングロードをもう少しハイスピードで走らせてみれば、改良の効果はより明確に実感し確信できるはず。次の機会にはテストコースも含めて限界域での挙動も試してみたいと思う。
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中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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