世界に出しても通用するデザインを! 新型トヨタ・クラウンのデザイナーがこだわったポイントとは (3/3ページ)

上質でシンプルな空間にワクワクするようなアクセントを

 クラウンらしい新しさの追求は、インテリアでも貫かれている。内装デザイン担当の吉村圭太さんにインテリアの狙いをうかがった。

「歴代のクラウンを振り返ってみると、木目を多用するなど、豪華絢爛さを感じさせるインテリアが多かった気がします。ですが、今の自分たちの暮らしのなかで、そうした調度品や家具が家にあるかと考えてみると、じつは非常に少ないんですね。たとえば結婚式に着ていく服でもスリーピースではなくもっとカジュアルなジャケット、ただし、すごく上質感のあるジャケットが好まれるようになっていると思います。フォーマルとカジュアルが融合した上質でシンプルな空間に、ワクワクするようなワンポイントを備えたインテリア。それが新型クラウンで目指したものです」

 新型クラウンには、新開発のダブルディスプレイが採用されているが、そうした先進デバイスと対比して印象的なのが、人の手で丁寧に作り込まれたような上質感のある仕立てのよさだ。しかも、そこにもクラウンらしい新しい表現がなされている。たとえば室内空間をぐるりと囲むように配置されたファブリック素材。ファブリックの内側にインパネが勘合しているというデザインは、従来にはなかった表現だ。先進感のあるデバイスや硬いインパネの背景に、柔らかなファブリックが見えることで、空間全体が品のある柔らかさに包まれる。また、注意深く見ると、驚くほど数多くの種類のファブリック素材が使われていることにも気付く。にもかかわらず、統一感のあるシンプルな美しさを獲得しているのも注目すべき点と言えよう。

 カラーデザインを担当した居垣富実子さんと、内装全体の造形リーダーを務めた政川勇さんのおふたりに話をうかがった。

「同じ素材でも、使う場所によってはエンボス加工で立体感を強く出すなど、いろいろなコーディネイトをしています。また、彩度が強すぎると居心地が悪くなったり、また柄が弱すぎると印象も柔らかくなりすぎたりしますので、それぞれの場所での見え方やそのバランスなど、かなりの時間をかけて研究しました」(居垣さん)

「ひとつひとつの部品をよりモダンに見えるように心がけながら、同時に操作しやすい形状にもこだわっています。そしてそれらを全体としてシンプルに見せようとするんですが、シンプルにすればするほど、それぞれのパーツの質感が大事であることが明らかになっていく。そこでまた各部の質感向上を追い求める。その繰り返しは本当にイバラの道でしたが、こうしたことを地道に積み上げていかないと、クラウンとしての空間のレベルは上がっていかないと考え、最後までやり切りました」(政川さん)

 こうした苦労が無数に積み上げられて生まれた新型のデザイン。内外装の随所に見出せるのは、細部に至るまで徹底的にこだわりが貫かれたクラウンらしい新しさの表現だ。デザイナーたちのこだわりがとことん詰まった新型クラウン。まさに「日本のフラッグシップ」と呼ぶにふさわしいデザインと言えそうだ。


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