半期決算セールの値引きテクニック! 新車購入時は「総値引き額」の分解が重要

下取り査定額がとくに大切な要素になる

 8月のお盆休みが明けると、新車販売現場は“半期決算セール”が事実上スタートする。半期決算セールとは、事業年度締めベースでの上半期締め月となる9月に合わせて、各メーカーともに値引き条件などを拡大し、積極的な増販を展開してくることを指している。下取り勝負

 お盆明けから“事実上”スタートとしたのは、半期決算セールに合わせた成約特典などのキャンペーンは8月最終週から始まるのが一般的となり、そのタイミングで本格的に半期決算セールがスタートするからである。お盆休み明け直後から半期決算セールが本格的に始まる間も、セールスマンは積極的な販促活動を展開することで、本格的にスタートした直後に受注につなげ、半期決算セールの販売実績(原則当該月内登録終了が条件)にしようとしているのである。

 3月の事業年度末は年間でもっとも値引き条件が拡大されるともいわれるほど、好条件で新車を購入することができるのは広く知られているが、半期決算セールも年度末セールに次ぐ販売台数を記録することもあり、かなり好条件が引き出しやすくなっているのである。

 いまどきは売れ筋が軽自動車やコンパクトカーなど、もともと車両本体値引き、つまり車両本体価格中の値引き余力が少ないモデルが売れ筋になっていることもあり、「新車の値引きが渋くなっている」と勘違いされるひとも多いようだが、むしろ“総値引き額”で見れば拡大傾向にある。総値引き額ベースで見れば、軽自動車でも20万円引きオーバーが珍しくないのだから、新車値引きは拡大傾向にあるのは間違いないといえよう。

 競争の激しいトヨタ・ノア3兄弟や日産セレナ、ホンダ・ステップワゴンのクラスでは、いまでも総値引きベースでは50万円近い値引き額が飛び交っているし、トヨタ・アルファードクラスでは、60万円引きなどといった好条件もスイートスポット的に提示されることはよくあると聞いている。そのような大幅値引きを短時間で引き出しやすいのが、まさに半期決算セールなのである。

 それでは総値引き額とはどういうものかといえば、新車の値引きの“出どころ”は多岐に渡っている。単純に車両本体価格からの値引き額だけでなく、オプション用品からの値引き、ローンを使った際の値引き支援、下取り査定額の上乗せ分などが複合的に合算されて、最終的な“総値引き額”を形成しているのだ。セールスマンが一般的に“50万円引き”などというときは、ほぼ総値引き額での提示と考えていいだろう。

 つまり過去でもいまでも、「値引き45万円しますよ」といって契約したとしても、純粋に車両本体価格から45万円を値引きしたわけではない。

 受注後セールスマンは、たとえば「車両本体価格から20万円引き、用品から10万円引き、ローンを利用してもらったから、そこからの値引き支援5万円、下取り査定額10万円アップして合計45万円の値引きになりました」という、“損金(ディーラーから見れば値引きは損金になる)内訳計算書”というようなものを注文書に添付するのである。

 そのため、商談時に逆に購入者側が総値引き額を“バラして”判断することができれば、さらに買い得な条件で新車を購入することが可能なのである。

 新車の値引きではまず車両本体価格から値引きする、“車両本体値引き”というものがあるが、これは大昔のように粘れば粘るほど値引き額が拡大するというものではなくなった。もともと車両本体値引き額の原資はディーラーの利益分からとなり、そのディーラー利益分が近年では車両本体価格中に占められる割合が削られる傾向にあるので、セールスマンもほぼ限界値を一発提示して、後伸びがほとんどないという傾向が目立っている。

 いまどきの新車値引きで拡大の重要なカギを握るのが下取り査定額の上乗せである。まったくの新規(初めてクルマを買う)で新車購入するということはほとんどなくなり、代替え購入(愛車を新車に買いなおすこと)がメインとなっている現在では、愛車を下取りに出して新車を購入するのが一般的な新車購入形態となっている。

 下取り車の内外装や、走行距離など、当該実車の状態などをチェックし、その時点での当該車種の価値を値踏みした結果が下取り査定額となる。いまでは新車購入商談での値引き不足分を査定額に上乗せするのが常態化している。そして半期決算セールのような“増販期”と呼ばれる、より多く新車を売らなければならないタイミングで、“下取り査定額を一律10万円アップ(どんなクルマでも査定額を10万円上乗せするということ)”などということをして、値引き額の底上げを行っているのである。

 さらにオプションからの値引きもしっかり引き出せば、なお好条件を引き出すことがきできる。装着オプション総額から20%引きぐらいを上限にして交渉を進めてもらいたい。

 そしていまでは、“値引き条件のプール制”というものを採用するディーラーも出てきている。いまどきでも新車購入希望車全員がカツカツに商談して、ギリギリまで総値引き額が拡大した条件で新車を購入しているわけではない。なかには「新車って値引きできるんですか?」とお客から聞かれることもいまだにあるという。

 そのためたとえば車両本体値引きベースで、「Aさんは限界値引き額まで5万円余裕があって契約できたので、この浮いた5万円をいったん担当セールスが“プール”して、次のBさんに使う(つまり限界値引き額+5万円)」といったものである。昔から「値引きしすぎたなあと思う契約を取ったあとには、決まってそれほど値引き条件をアップせずに契約がもらえる」といったジンクスのようなものが、セールスマンの間にはあったのだが、それをシステム化したといってもいいだろう。

 セールスマンは販売台数で実績管理をされる一方で、“損金(値引き)をどの程度まで抑えて会社利益に貢献したか”という面でも実績評価されている。そのため薄利多売のトップセールスマンよりは、販売台数も大切だが、しっかり利益を出しているセールスマンのほうが実はより評価されるといった話を聞いたことがある。

 だいたい“45万円引き”などとセールスマンが初回商談から提示してきた場合で、さらに見積書上に用品値引きとして別記されていない時は車両本体値引きと用品値引きを合算し、値引きを膨らませていることが多いので、この場合は買い得感が薄いといえよう。さらに下取り査定額の上乗せまで加味されていれば、さらに買い得感が薄くなることになる。

 車両本体値引きの拡大は中古車相場に悪影響を与える(乱売しているととられ、相場が悪化する)ので、どのメーカーでもできる限り抑えたいのが本音。そのためもあり、用品値引きや下取り査定額の上乗せなどへの、“総値引き拡大依存度”が高まっているのである。

 下取り査定額への上乗せが常態化していることは前述したとおり、そのため同じクルマを下取り査定しているのに、ディーラーによって大差がつくことも多い。「あれっA店はもっと良かったよ」などとトークを展開して値引きアップを引き出すのもおすすめである。

 その際最終ジャッジをする時には、買い取り専業店へ下取り車を持ち込み買い取り査定額を提示してもらおう。新車をより多く売りたい半期決算セールは、同時に良質な下取り予定車もたくさん市場放出されることになる。買い取り店間でも競争は激しいので、買い取り額アップキャンペーンなどを行っているので、単に下取り査定額アップのツールにするだけでなく、下取り査定額と比べて、圧倒的な好条件が出ることもあるので、その時は買い取り店への売却も検討すること。

 ただ、新車商談開始当初に「買い取り店のほうが好条件だ」と早合点して買い取り店へ売却しないこと。下取り査定は、新車購入商談が進むなかで、値引き額の調整のためにじわじわ査定額がアップするので、見極めは契約直前にすることが大切だ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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