今どき新車ディーラーの悪徳セールスマン! その手口と実態

下取り車の「転売」は今でもある話

 新車販売業界に詳しいひとの間では、「最近のセールスマンはお行儀がいいよね」などという話が良く出てくる。いまから30年ほど前に日本中が好景気に沸いた“バブル経済”が崩壊してしばらく経つころまでは、新車のセールスマンといえば、“お行儀の悪い”ひとたちが結構目立っていた。

 そんなお行儀の悪い行為のなかでもとくに目立ったのが、“下取り車の転売”である。一般的には、下取り車ありでの新車購入の場合には、担当セールスマンが当該車両の査定を行い査定額を算出し、基本的には購入した新車を納車した時に下取り車を回収することになる。

 そしてこの回収した下取り車はセールスマンが所属するディーラーの“査定課”などの中古車担当部署預かりとなり、ディーラー名義に変更し、自社の中古車センターもしくは、専門業者などに売却したりしていた。あくまでセールスマンを介してディーラーが査定を行い、“買い上げる”ということになるのである。

  

 しかし、しばしば商談中にセールスマンが「私に預けてもらえば、もっといい値段つきますよ」と、下取り車をセールスマンと個人的に付き合いのある業者へ、自分の勤務するディーラーを通さずに転売することを誘ってくるケースが結構多かった。そして転売した業者から受け取った代金から自分の“手数料分”を差し引いてお客に渡すことになるのである。

 ディーラーに下取りに出すより条件がいいなら問題ないのでは? とも思いがちだが、名義変更されずに旧所有者名義で転売が行われていくことにより、旧所有者がトラブルに見舞われるリスクが高まるし、肝心な話となるが、果たして本当にディーラーに下取りに出すより“割が良かった”のかも大きな疑問が残っていた。

悪徳セールスマン

 当時を振り返る事情通氏は、「バブル末期のころ新人で新車販売セールスの世界に入りましたが、よく上司や先輩に『今晩空いてる?』とか聞かれましたよ。何をするのかと思ったら、『このクルマを田んぼの真ん中にカギをつけたまま置いてきてくれ』などと言われてやっていました。置いてきたあとは最寄りの場所で先輩や上司がピックアップしてくれ、そのあとはご馳走してくれました。いま思えば下取り車を勝手に転売していたようです」と話してくれた。

 運輸支局へ勝手にいってお客のクルマの車検証の名義変更などをするのも日常茶飯事で、そのうち某ディーラーではセールスマンの運輸支局の出入りが禁止されたなどという話も聞いたことがあった。

 新車が飛ぶように売れていた時代であり、いまほどコンプライアンスなどが意識されなかった時代なので、“数が売れれば何をやってもいい”というような空気が業界にも流れていた。

 そこで、新たに新車販売業界に入ってくる“新人セールスマン”に対しては、“悪さ”をしないような情操教育をしっかり行い“清く正しいセールスマン”を育て上げることもかなり意識し、やんちゃなセールスマンが定年退職などでリタイアすることで、いまではすっかり悪さをするセールスマンが目立たなくなった。

悪徳セールスマン

 そのうち世の中もコンプライアンスなどに厳しくなってきたので、セールスマンも行儀よくしているのかと思えばそうでもない。相変わらずセールスマンがコソコソと“悪さ”をしているとのこと。車両代金の持ち逃げなどもまだまだあるようで、いまや現金購入でも、口座振り込みが当たり前。そのなかで下取り車の転売もまだまだ行われているのである。いまは買い取り専業店への転売が主流となっているようである。

悪徳セールスマン

 事情通氏の話では、「結構派手に下取り車の転売をしていて最近バレた某セールスマンは、日系ブランドディーラーに勤務しているのに、本人はドイツ系高級セダンを乗り回し豪邸に住んでいたそうです」と話してくれた。

 いまでは、そんな“転売して“儲かる”ような良質な下取り車なら、ディーラーでも自社で再販したり、オークションに出品して、しっかり利益を出したいということもあり、セールスマンの個人的な転売を厳密に防ぐために、下取り車のない新車の受注があった場合には、ディーラー本部からそのお客の家に、「今回は新車ご購入ありがとうございます。ところで今回は下取り車がございませんので、増車なのでしょうか?」などと、下取り車の転売がなかったかどうかの探りの電話が入るのがほぼ当たり前となっている。

 逆に下取り車がない(あるいはセールスマンに個人的に転売してもらった)のに、ディーラー本部から電話がなかったら、個人転売を黙認あるいは、組織ぐるみで行っていると考えてもいいだろう。

悪徳セールスマン

 ディーラーのなかには、セールスマンから定期的に預金通帳を提示させて怪しい振り込みがないのか確認しているとのこと。しかし販売現場からは「口座振り込みにして”足跡”を残すセールスマンもいるようですが、そんな下手は打ちませんよ」という“強者”もまだまだ多いようである。

 “セールスマンの甘い言葉にご用心”は、いまも昔も変わらないようなので、くれぐれも用心してもらいたい。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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