夢の技術とも思われた5バルブエンジンはなぜ消えたのか? (2/2ページ)

技術の進化で効率化が測られるようになると5バルブは姿を消した

 しかし、現在5バルブエンジンはすっかりと姿を消してしまっています。その理由は燃焼室の形状と、吸気効率の悪さ、そしてバルブ系のフリクションロスの大きさです。燃焼室の形は燃焼効率に直結します。ひとつの理想は半円球のドーム型燃焼室で、表面積が最小となるので熱が逃げません。

 2バルブでは問題はありませんが、4バルブではバルブ径が大きくできません。それで、表面積とバルブ径のバランスで三角屋根のようなペントルーフ型燃焼室がほとんどになっています。5バルブでバルブ径を確保しようとすると、ボコボコした多球形の燃焼室になってしまい、燃焼効率が悪化してしまいます。

 また吸気バルブを2本から3本にすると、吸気ポートが横に広くなってしまい、吸気抵抗が増えたり、特定の回転域で乱流が発生したりします。その結果、吸入効率が悪くなります。さらに最新のエンジンのバルブ機構では、スイングアームを介して抵抗を低減するのが常識化していますが、5バルブでスイングアームを使おうとすると、スペースの面から難題です。

 エンジンというのは燃焼というアナログな反応を利用するので、これまでは職人のカンみたいなもの、優秀なエンジニアの洞察力みたいなものが、意外なほど大きなアドバンテージを生み出しました。

しかし、その燃焼がコンピューターで解析できるようになってきた現代では、画面の中で結果が見えるようになりました。あくまで物理の原理原則通りに作り込むことが、重要になっているのです。それが5バルブエンジンが過去のものになってしまった大きな要因だと思います。


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