多数のVIPをもてなしてきたトヨタ・センチュリーにまつわるトリビア12選

滅多に見られない日本で特別なあのクルマのことも!

 日本を代表する高級車についての薀蓄と、雑学稀代の高級サルーンとして長い歴史を刻んできたクルマとあって話題には事欠かない。それらはセンチュリーというクルマをより深く理解するために知っておいて損はないだろう。そんなセンチュリーにまつわる雑学を紹介しよう。

センチュリーのあれこれ 基本編

■ウンチクその1
豊田佐吉翁生誕100年のメモリアルカーとして誕生

 本来、日本語で「世紀=century」を意味する単語だが、クルマ界におけるセンチュリーと言えば、超高級車のことである。その車名は、トヨタグループの創業者である豊田佐吉氏の生誕100年を記念したもので、センチュリーがトヨタにとって特別な存在であることがうかがえる。さらにセンチュリーが誕生した翌年の1968年が、「明治」から数えて100年だったこともネーミングの由来となっている。

 初代から、まさに20世紀にその名を残す名車であり、長きに亘って愛されてきた。ショーファードリブンとして開発されたセンチュリーは、一般のクルマとは明らかに異なる作りがなされ、品質の高さと豪華さ、後席乗員にもたらされる圧倒的な心地よさが持ち味。そうした特徴を継承した新型は、これからの100年を見据えたクルマとして21世紀にその名を刻むことになる。トレードマークの鳳凰エンブレムと相まって誇らしげな印象を与える。「世紀」を意味する仰々しいネーミングもこのクルマだから似合う。

■ウンチクその2

エンブレムに描かれた「鳳凰」ってなに?

 鳳凰とは中国神話に登場する伝説の鳥のこと。各地にさまざまな民話が残されているが、そのなかでは、人の性質を見抜いて行いのいい者に祝福を授けたり、徳の高い君子の出現を預言する鳥として描かれているほか、卵が不老不死の薬になるといった説、舞い降りた地には宝が埋まっているといった伝説が語られている。

 日本でも昔からめでたいことが起こる吉兆である鳥とされており、建築の装飾などにも多数使われている。京都の金閣寺や平等院などはとくに有名だ。日本を新たな時代へと導くリーダーのためのクルマとして生まれたセンチュリーにとって、じつにふさわしいエンブレムと言える。ちなみに現行の1万円札に大きく描かれている鳥も鳳凰だ。新型センチュリーにあしらわれる鳳凰エンブレムの金型は、江戸彫金の流れをくむ現代の工匠が手彫りで作り上げている。

■ウンチクその3

変化よりも伝統を重んじる「エンブレム」の変遷

 3代目となる新型では、2代目同様、トヨタのマークやロゴは一切使用されていない。あるのは鳳凰のエンブレムとセンチュリーのイニシャルを象ったオーナメントのみ。基本のデザインは初代からほとんど変わっておらず、センチュリーがいかに流行に左右されず作り上げられたクルマかを感じることができる。ちなみに初代のエンブレムは当時の工匠の手による手彫りの金型で作られていたが、その手法は新型でも継承されている。

 新型の金型は現代の工匠が1カ月半もの時間をかけて鏨(たがね)と槌で手彫りし、翼のうねりや繊細な羽毛の表情を鮮やかに表現。新型の開発テーマは「継承と進化」というものだが、このエンブレムからは、「深化」にかけた想いも伝わってくる。

■ウンチクその4

センチュリーロイヤルは超VIPのためだけに作られた究極の1台

 ベースこそセンチュリーだが、全長は6mを超え、全幅も2m超、車重は2920㎏に達し、ボディサイズだけを見ても明らかに別物であることがわかる。

 もちろん中身は特別仕様となっており、乗車定員は陪乗席を備えることで8名となる。側扉は観音開きを採用し、後扉窓、扉後方ウインドウの窓枠は、式典のときなど沿道から後席の天皇(または皇族方)のお姿が見られるよう大きめに作られている。車内は天井に和紙、後部座席には毛織物、乗降ステップには御影石があしらわれ、いたるところに天然木などの自然素材が使われている。前席は革張りだが、後席は滑りにくく柔らかい布製という最高級のショーファーカーならではの様式を採り入れている。主に国会開会式、全国戦没者追悼式や国賓接遇といった催事が行なわれるときに使用される。

センチュリーのあれこれ 新型編

■ウンチクその5

「内覧会」には各界のVIPが揃い踏み! 伝統のディーラー、トヨペットが開催

 新型車が登場するとき、メディア向けに「発表会」が催されるが、センチュリーの場合は、それよりも「顧客向けのお披露目のほうが重要」とばかりに、東京トヨペット主催の内覧会が開催された。会場は高級ホテル。招待されたのは法人ユーザーで、やはり後席に乗るであろうエグゼクティブの皆さんが大半を占めていた。

 ノンアルコールのシャンパンで乾杯し、新型が派手なアンベールによって姿を現す。さらに新型がどういうクルマであるかを、開発責任者を務めた田辺主査が登壇し、自らの想いとともに語るなど、顧客に対するデモンストレーションは見事に成功。センチュリーの「普通じゃない」ところをより強烈に印象付けることができたわけだ。

■ウンチクその6

独特の和名によってもたらされる風格と気品

 欧州車をライバルとせず、独自の「センチュリーらしさ」を目指して進化してきた。日本の美意識や日本人のもてなしの心が込められたデザインは、欧州車とは違う発想から生まれたものと言える。

 先代から継承されたボディカラーの和名も日本の最上級車であることを主張するものだ。和名という手法はクラウンのジャパンカラーセレクションパッケージでも採用されているが、あちらは「夜霞」や「茜色」「天空」など、日本の情景を想起させるやさしいネーミングが多い。

 一方、センチュリーでは「神威」や「飛鳥」など、より風格や気品、力強さをイメージさせる名前となっている。誇り高き和名は、日本の未来を創るリーダーにふさわしいネーミングと言えそうだ。

■ウンチクその7

なによりも品質が最優先! 完成車のチェックも「特別メニュー」

 量産車とはかけ離れたプロセスで時間と手間を惜しまず、美しさと精度の極致を追求したセンチュリーだが、品質管理でも特別メニューが用意されている。検査は主に外観や見栄えを点検する静的なものと、走行での動的なものがある。静的なものでは、ドアの建て付けデータまで1台ごとに記録しているのが特徴だ。

 動的な確認では全車で50㎞走行テストを実施している。この検査を行うのは4人のエキスパートだが、検査員のレベルアップを行ない、品質自体の定義を明確にするため、開発や車両評価メンバーと評価基準の物差しをすり合わせ、意図した性能がバラツキ無く発揮されているかの情報共有を行っている。

 テストは1時間から1時間半かけて行い、工場からの構内を10〜20㎞/hという低速走行も評価に含まれるほか、テストコースでは160㎞/hまでの範囲で加減速やレーンチェンジを実施し、さまざまな路面や速度での乗り心地や音、フィーリングを確認する。センチュリーというクルマはこうあるべき、という定義のもと動的、静的、いずれの観点でも確かな品質を維持するべく、厳格な評価が行われているのだ。

■ウンチクその8

後席乗員のために利便性が満足感を高める

 高級であることだけにとどまらず、使い勝手のよさを追求していることも所有者を満足させてくれる要素となる。とくにセンチュリーの場合は、後席乗員に対する配慮が徹底している。収納性や使用性の向上を図ったリヤセンターアームレストや、足の支え方を徹底して吟味したオットマンなどは、使うほどに優れた利便性を実感できる。一般的な実用車にありがちなこれみよがしな感はなく、自然に使いこなせるところがじつに心憎い。手動だったオットマンは電動となり、体型によって異なる足の支持方法も熟考されている。ボックスは優れた収納性を実現する。

■ウンチクその9

気になる受注台数は? 新車効果とは無縁だが……

 発表から1カ月を経過した時点での受注は、なんと420台! トヨタが目論んでいた月販目標台数が50台であることを考慮すると驚くべき数字だが、それゆえ納車までの期間は5〜6カ月を要するということだ。

■ウンチクその10

歴代モデル総生産台数は累計約4万1000台

 販売台数の内訳は、初代(1967年〜1997年)が約3万2000台で、2代目1997年〜2017年)が約9000台となる。高品質かつこだわって作り込まれたクルマだけに、長く使われるケースが多いと推察できる。

■ウンチクその11

中古車平均価格は初期型ならお安い227.9万円! ※編集部調べ

 流通台数は決して多くないが、国産唯一のV12エンジンを搭載した超高級サルーンを手にしたいなら、中古車購入を健闘する価値は大いにある。年式や状態にこだわらなければ、30万円台という物件も……。

センチュリーのあれこれ 比較編

■ウンチクその12

「新旧比較」で見えてくるセンチュリーの価値

 継承と進化という開発テーマのもと、デザイン面では先代型の面影を残しながら、各部のリニューアルを図っている。最終型との比較では、ボディサイズがひとまわり大きくなり、パワーユニットをハイブリッド化。足まわりの構造や特性を大幅に変更して後席乗員が心地よくくつろぐための能力がレベルアップしている。また、先代型は20年に亘って販売されていたことから、装備や機能の古さは否めなかった。そこで新型は、トヨタの最新技術を奢ることで機能・装備を一新し、現代のショーファーカーにふさわしいクルマへと変貌したわけだ。

○リヤコンソールスイッチ
「タッチパネル式」になって直感的な操作が可能

 先代型までのスイッチ式は味がある反面、操作がやや煩雑。多彩な機能を的確に使いこなすには、タッチパネル式とするのが必須だったわけだ。

○ヘッドランプ
ディスチャージヘッドランプから「フルLED」に変更

 デザインや形状はもちろん、ディスチャージヘッドランプ(2008年に採用)からフルLED(アレイ式AHS付き)のヘッドランプに変更されている。

○後席タワーコンソール
ディスプレイは「11.6インチ」に大型化

 一般的なクルマではナビ画面が大型化されているが、後席メインのセンチュリーでは後席タワーコンソールの画面が高精細かつサイズアップされた。

○エアコン
「4席独立」で快適性がさらに向上

 先代型は2ゾーンコントロールフルエアコンを採用していたが、新型から4席独立温度コントロールフルエアコンとなり、快適性はさらに向上している。

○オットマン
「電動調整」だからちょうどいい位置に設定できる

 手動から電動に変わったことで、これまで以上にきめ細かな調整が可能となった。電動化と言えば、パーキングブレーキも足踏みから電動式となった。

○サイドミラー
「ドアorフェンダー」は好みが分かれるところ

 新型はサイドミラーがドア付けとなり、今どきのスタイルへと変貌した。フェンダーミラーは従来型のフォルムだからこそ似合っていた装備とも言える。


新着情報