【試乗】新型スバル・フォレスターの冒険心をかき立てる優しい気遣い!

出足をそっとサポートする主張しすぎないハイブリッド

 1997年登場の初代から21年目を迎え、5代目となった新型フォレスター。初夏の頃には栃木にあるスバルの実験センター、盛夏の頃には修善寺のサイクルスポーツセンターと、クローズドコースで試乗してその魅力を実感してはいたが、やっぱりクルマは一般道で走ってナンボ。路面もちがうし、街並みやほかのクルマたちの流れの中で乗ってみないことには、本当の良さはわからない。すでに7月19日から発売開始され、そろそろデリバリーも始まる頃だとは思うが、今回ようやく一般道で試乗する機会が訪れた。

フォレスター

 新型フォレスターには、スバルが初代から貫いてきた「人を第一に置いたクルマづくり」に加えて、さらに価値を高めるためのキーワードとして「冒険」と「快適」が掲げられている。この2つを突き詰めるために欠かせなかったものが、スバルの新世代シャシーである「SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)」の採用だ。これによってすべての基本性能が引き上げられ、とくにボディ剛性に関しては、曲げ剛性が先代の約2倍、ねじれ剛性が約1.4倍と驚異的な進化を遂げた。

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 そしてもうひとつが、新しい2本柱となったパワートレイン。すでに好評を博していたXVハイブリッドと基本的なシステムを共用しつつ、バッテリーがリチウムイオンとなった2リッター自然吸気エンジン+モーターを「e-BOXER」として採用し、もうひとつには2.5リッター自然吸気エンジンが用意されている。

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 さらに、フォレスターの肝とも言えるオフロード走破性を高めるため、「X-MODE」を「SNOW/DIRT」「DEEP SNOW/MUD」も2モード切り替えへと進化させ、全車標準装備とした。これはタイヤが埋まるような悪路や深い雪など、トラクションコントロールを効かせたくない場面では自動でオフになることで、ここぞというところでピンポイントのパワーが発揮できるなど、従来よりも幅広い状況で安定した走破性が得られるようになっている。これは「冒険」をより多くの人に、多くの場所へと広げるために、フォレスターの大きな強みとなるはずだ。

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 さて、試乗はまずトップグレードとなるe-BOXERの「ADVANCE」から。スタートボタンを押すと、シーンと静かな中で目の前のメーターが鮮やかに始動した。グリーンの「EV」表示が点灯していれば、40km/hくらいまでならモーターのみの静かな走行も楽しめるというが、普通にアクセルペダルに力を入れるとすぐに消灯し、ハイブリッド走行になった。発進直後のひと転がり目がスーッとなめらかで、車重を感じさせない気持ち良さだ。

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 アクセルをさらに踏み込んでいくと、従来の6段式から7段式に進化したリニアトロニックのおかげもあって、まるで大きな波に包まれながら進むような、パワフルで余裕たっぷりの加速フィール。減速し始めてからすぐの再加速といったシーンでも、一拍の遅れもなく思い通りのレスポンスで応えてくれるのが爽快だ。

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 これは、直噴化とロングストローク化で高効率を極めた新世代水平対向エンジンを、最高出力10kWの電動モーターが最適なシーンで手助けすることで、発進直後や再加速時など、「ここで出たい」と思うところでしっかりと加速することにこだわったという、エンジニアの狙い通りといったところだろう。

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 ブレーキフィールに関しても、電動化モデルではどうしても初期から効きすぎたり、微細な調整ができないといった違和感が生じやすいところを、ガソリンモデルとはキャリパーの素材から変えてe-BOXER専用にチューニングしたというだけあって、より自然な利き具合に仕上がっていると感じた。

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 また乗り心地も、やはり新世代シャシーの恩恵は大きく、直進でもカーブでもほどよい重厚感を伴いながらも、決して重ったるくないしなやかさが勝る。どこか欧州車の乗り味にも近い、プレミアム感が感じられるのが新型フォレスターの魅力。後席の乗り心地も落ち着いているので、e-BOXERは運転に苦手意識を持つ女性でもリラックスして乗れるし、ファミリーカーとしても全席が快適に過ごせそうだ。

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ハイブリッドよりも豪快かつパワフルなガソリンモデル

 次に、オレンジのラインがエクステリアやインテリアの挿し色に使われ、ちょっとアウトドアなイメージが楽しいガソリンモデルの「X-BREAK」に乗り換えた。2.5リッター自然吸気エンジンは、直噴化によって約90%の部品が見直されており、184馬力/24.4kg-mとe-BOXERを凌ぐパワーを発揮しながら、省燃費化で実用域では先代の1.6リッターターボや2リッターターボと同等以上だと言われている。

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 そのパワフルさは発進からすでに気分を高揚させてくれるもの。グイッと鋭く加速して、そのまま余裕いっぱいで悠々とクルージングでき、ハンドリングも俊敏だ。けれど決して神経質な感じではなく、欲しいところではスッとレスポンスが敏感になりつつ、リラックスして走りたい時にはおおらかさも持ち合わせるような、懐深い印象がある。

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 乗り心地はe-BOXERと比べると少しだけゴツゴツと硬めかなと思ったが、不快なほどではなく高速道路でもゆったりできる。今回は少なかったけれど、カーブが続くような道ではこのくらい硬めの方が、姿勢変化が小さく走らせられるだろうし、雪山などへ頻繁に出かける人たちにはピッタリかもしれない。なんといってもガソリンモデルの良さは、ほどよい豪快さとパワフルさ。こちらは海へ山へとどんどん出かけたい人にオススメしたいグレードだ。

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 そして、「快適」というキーワードで感じたことは、先代でも決して悪くはなかった乗降性やラゲッジの使い勝手に関して、細かな配慮でさらに進化させているということ。

 たとえば後席のドアがより大きく開くようになり、幅広いステップや張り出しを抑えたサイドシルなどで、乗降性がかなりアップ。これならチャイルドシートのお世話もしやすく、子どものいるファミリーはもっとお出かけしたくなりそうだ。

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 さらにラゲッジは、開口部をスクエアな形状にしたことで、従来は引っかかってしまったベビーカーやゴルフバッグなども、横にしてサッと積めるように。ほんの小さな進化かもしれないけれど、これが毎日のことになると結果的にストレスになりかねない。新型フォレスターは、そうした見過ごされがちなポイントも、丁寧に磨き上げてきていると感じる。

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 大きな話題を集めた、顔認証を使って居眠りや脇見を警告する「ドライバーモニタリングシステム」は、なかなか一般道でも試すチャンスはなかったが、こうした先進機能が搭載されたことも含めて、新型フォレスターは乗る人みんなに優しいおもてなしと、ワクワクするような冒険心をくれるSUVになっている。

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まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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