【美人自動車評論家】吉田由美の「わたくし愛車買っちゃいました!」その53

モータースポーツの魅力は万国共通です!

 2001年から「全日本プロドリフト選手権」(D1グランプリ)が始まり、日本発祥のモータースポーツと言っても過言ではない「ドリフト」。相撲や柔道などと同様、モータースポーツ界の「お家芸」。

「ドリフト」とは、コーナーの進入でクルマを滑らせ、そのコントロール技術を競うモータースポーツ競技のひとつ。日本では「F1」に倣って「D1」と呼ばれ、そのシンボル的存在がレーシングドライバーの土屋圭市氏。その華麗なドリフトテクニックから愛称は「ドリキン」。「ドリフトキング」の略です。今ではアメリカやアジアなどでもドリフトも土屋氏も人気者となっています。

 そもそもクルマの動きでカッコイイと思うのは、地域でも好みが分かれるようで、欧州などはクルマがジャンプするのが好きなのでラリーなどが人気なのは頷けます。一方、日本ではジャンプよりクルマがスライドさせる「ドリフト」のほうがカッコイイと思われているようです。

 そんなドリフトのFIA公認の世界大会が、2017年から始まった「FIAインターナショナル・ドリフティングカップ」。会場は東京・台場の船の科学館前特設コース。

 競技はひとりずつドリフト走行をする「ソロラン」と、2台が先行・後追いをそれぞれ1回ずつ走るのを1セットとして、トーナメント形式で競う「バトルトーナメント方式」のふたつ。

「ソロラン」では、ドリフト走行時の速度やカッコよさなど技術力を競い、「バトルトーナメント方式」では後追い車がどれだけ先行車に近づき、角度をそろえられるかをトーナメント方式で競います。速さ、角度変化速度、角度の安定性などを機械で測定しながら、今回から採用された3人の審判員による「ヒューマンジャッジ」によって評価されます。ドリフトはよく、フィギュアスケートに例えられますが、まさにアスファルトの上がスケートリンクのようにその上でクルマが華麗に、そして力強く踊る感じ。今年は14の国と地域から総勢21名で優勝を争われました。

 じつは私は今回この「FIAインターナショナル ドリフティングカップ」初観戦。「バトルトーナメント」を観戦しましたが、事前説明などはとくになく、事務局Kさんも「見ているうちにわかりますよ」のこと。正直って始めは見方がよくわかりませんでしたが、見ているうちに観客が接近戦やいいバトルを行うと盛り上がるので、「なるほど〜」。

 レースは日本開催だけに、もちろん日本人選手の活躍を内心期待していました。しかし去年の優勝者、川畑真人選手がマシントラブルで途中敗退。優勝は「ソロ」「バトルトーナメント」共にロシアのゲオルギィ チフチャン選手のまさに完全優勝です。2位はスイスのイヴ・メイエー選手。3位にタイのチャナッポン・ケードピアム選手、とすべて外国人選手。

「ドリフト」はある意味日本の文化なのに、表彰台には日本人選手がいない…。
リアル「これでいいのか日本人」という気分です。

 しかし、会場の雰囲気もロシアの選手が多いせいか、ロシア人のサポーターが多く、ほかにも国際大会らしくアジア系の人たちも多かったのが印象的でした。

 でも私の席の前に座っていたロシア人女性と日本人の小さな子どもたちの微笑ましい光景を見ることができました。若いご夫婦と3人の小さな子どもたち(一番上のお兄ちゃんが5〜6歳ぐらい)が、数名のロシア人サポーターの隣に座りました。もちろん子供たちはロシア語はもちろん英語も話せずに日本語だけ。一方のロシア人サポーターの一番端に座っていたのが女性で、彼女はロシア語も英語も話せましたが、日本語が話せません。

 しかし子供たちは興味深々で日本語でどんどん話しかけます。するとロシア人女性は「自分もドリフトをやっていて、これが私のクルマ」と写真を見せたり、ちゃんとコミニュケーションが取れているのです! たとえ言語が違っても、「ドリフト」という共通の話題で年齢や国籍、性別を超えた「お友達」……そんな光景に心がほっこりしました。

 爆音とスモークの陰に、こんな心温まる光景があるのです。とはいえ、競技としては日本人選手の皆さんにぜひ次回は頑張っていただきたいものです。


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