【試乗】トヨタ新型スープラはコーナリングありきのリアルスポーツ志向! (1/2ページ)

乗り込む瞬間従来のトヨタ車でないことがわかる

 すでに世界各地でテスト走行風景などが目撃されスパイショットが専門誌の紙面を賑やかしているトヨタ新型スープラ。本格デビューまでのカウントダウンが始まるなか、そのプロトタイプモデルに試乗する機会が与えられた。場所は千葉県にある袖ヶ浦フォレストレースウェイだ。本格的なサーキットを使った全開走行が許された。

 用意されたスープラ・プロトタイプはボディラインが明らかにならないようにカモフラージュ用のマスキングカラーが施されている。よくスパイショットで目撃されているカラーリングそのものだ。

 開発責任者の多田哲也スポーツ車輛統括部長も姿を見せている。

  

 スープラは1978年の初代登場(国内ではセリカXX名)から直6エンジンとFR(フロントエンジン/後輪駆動)レイアウトを特徴としており、次期モデルもそれを踏襲している。多田さんによれば詳細はまだ述べられないが、エンジンは3リッター直6のターボエンジンを搭載し8速のトルコンATと組み合わせ電子制御デファレンシャルを介して後輪2輪を駆動しているという。

 多田さんといえばトヨタ86の開発責任者として知られ、86開発以降はこのスープラの開発に携わってきた。その過程において「スポーツカーにおいて必要なのはショートホイールベースに低い重心、ワイドなトレッドだ」という結論に達したのだそうだ。

 重心高は水平対向フラット4エンジンを搭載する86より低くすることにこだわり、結果として直6エンジンながら86に比べ8mmの重心低下を実現した。重心低下化に貢献したのはシャシーフロア下面に剛性を高めるブレースを張り巡らせたことが要因で、このブレース効果によりシャシーの捻り曲げ剛性はカーボンモノコックシャシーのレクサスLF-Aを凌いでいるというから驚きだ。

 車体下面の処理も高度に仕上げほぼフラット化。サスペンションアームにもフィンを取り付けるなど空力処理を高度に施している。公開時には「車体を鏡に載せてお客様にご覧いただきたい」とも。またタイヤ性能にも着目し、吊るしで最高性能と認められるミシュラン・パイロットスーパースポーツを選択し装着している。

 まずは現車輛の外装チェックをしてみた。車体パッケージはFRの2シーター。ロングノーズ/ショートデッキデザインでフロントボンネットフードは曲面が個性的でサイドから開く大型なもの。素材はルーフ以外はアルミ製だ。ドア開口部は小さくサイドシルが太く剛性が高そう。後部はハッチゲートを持つが形状は80スープラを彷彿させるスポイラー状の曲面で構成されている。

 ルーフ部分はスチール製のようだがダブルバブル形状が採用されていてダッジバイパーのような迫力を醸し出している。

 ドアを開けて乗り込むとインパネや室内全体はブラックカバーが掛けられデザインがわからないようにカモフラージュされている。太いサイドシルは大きくまたぎ込むように乗り込まなければならないが「トヨタの基準を無視した」と多田さんが言うようにシャシー性能を重視した結果のようだ。

 エンジンを始動する。低く野太いサウンドがパワーを予感させるが、エンジンマウントが優れているのか振動をほとんど感じない。このパワーユニットもサスペンションもじつはBMW製で、トヨタからはショートホイールベースと低重心を要求し、BMW側もそれに応じてくれたとのことで、この組み合わせは新型BMW Z4とも共有することになる。86がスバルBRZと共有していたのと同様と思えば理解しやすいだろう。

  

 トランスミッションは8速のトルコンAT。

 センターコンソールにあるドライブモードスイッチをSPORTに合わせ、電子制御のVSCは長押しで完全にオフできるとのことで、サーキット全開走行を鑑みVSC完全オフで走行を始めた。

 走り出して感じたのはロードホールディング感が高く、タイヤの転動に対して路面からの反力がほとんど車内に伝わらず、極めて快適かつ静かでスムースだということだ。遮音、防振のレベルと質感はまさに欧州車のレベルで従来のトヨタ車とか明らかに異なる質感の高さが感じられる。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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