中国メーカー名物の「パクリカー」が消えたワケ (1/2ページ)

世界的なモーターショーになった北京・上海・広州では見かけない

 北京や上海、そして広州モーターショーなどは、東京モーターショーをはるかに凌ぐ会場規模と出展メーカー数の多さを誇り、とくに交互に隔年開催される北京と上海モーターショーは、最近では欧米、日本、韓国など世界の主要メーカーがワールドプレミアモデルを多数用意するなど、事実上アジア最大規模のメジャーオートショーとなっている。

 しかし、いまから10年ほど前は先進国メーカー、とくに日系メーカーのなかでもトヨタ車のコピーモデルが会場のそこかしこに展示してあり、その様子を面白おかしく日本のメディアが報じていた。しかし、最近は筆者が実際訪れている北京や上海、広州の各モーターショーではほとんどコピー車を見かけなくなった。

 ここ数年でのコピー車のトピックといえば、2014年にジャガー&ランドローバーが中国民族系メーカーである奇瑞(チェリー)汽車と中国で合弁会社“チェリー ジャガー ランドローバー オートモーティブ”を設立し、中国での一部モデルの現地生産を開始した。レンジローバー・イヴォークが中国で生産開始をしたころと時を同じくして、中国メーカーの “陸風(ランドウインド)汽車”が“X7”というフルコピー車を発表した。筆者は広州モーターショーの会場でこのX7を初めて見たのだが、冗談抜きでイヴォークと間違えているひとを見かけた。

 X7はエクステリアやインテリアはほぼ完ぺきにイヴォークをコピーしており、搭載エンジンは三菱製4G63型2L直4ターボエンジンが搭載され8速ATが組み合わされていた。最新のランドウインドのウエブサイトを見ると、X7はいまもラインナップされており、搭載エンジンがフォードと合弁会社を設立したり、SUVや商用車などをメインにラインアップする江鈴汽車との技術提携で開発したとする1.5Lターボへダウンサイズされ、見た目もイヴォークがベースなのだが、本家とは一線を画し、独自に改良が進んでいる。

 このようにコピー車が出現するひとつのパターンとして、現地生産を開始するととたんに、CADデータなどが外部流出し、それを購入した中国メーカーが続々とコピー車をラインアップしてしまうのである。

 クルマとは話は異なるが、iPhoneのコピーモデルといわれるものを見たことがある。話の真偽は不明だが、これは製品を入れる箱や、本体の外側の生産を依頼されたメーカーが、アップル社へ納入する数以上に生産して横流しているとの話であった。ただ電源を入れるとアンドロイドが起動したので、肝心の心臓部となる部分までは外部流出はしていないようなのである。そのため扱う業者も“偽物だけど本物”みたいな微妙な言い方をしていた。

 話をクルマに戻すと、X7のようにたまにコピー車を見かける程度になったのは沿岸部で開催されるような規模の大きなオートショーだけともされている。中国国内でも経済成長著しい沿岸部の大都市では、外国人の目に触れる機会も多いので、主催者(つまり政府)がコピー車をメインにラインアップするメーカーの沿岸部のオートショーへの出展を規制してきていたとの話も聞くので、沿岸部で見かけなくなっただけで内陸地域ではまだ無数のコピーメーカーがあるともされている。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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