旧車のフルレストアに潜む危険! 美しさと引き替えに失われるものとは (2/2ページ)

旧車がもつ味が失われることもある

 そして切り貼りしての溶接にも問題があって、鉄板に火が入ることで耐久性は落ちる。さらに袋部分で手が入らない裏側の防錆を完璧に行うのは非常に難しい。防錆処理は、新車生産時のように防錆剤のプールに車体まるごとドブ漬けできれば話は変わってくるだろうが、一般的には無理である。

 また塗装自体も、オリジナルに対してフルレストアしたものはきれい過ぎる場合もある。たとえば昔の塗装はラッカーを使っていたりと、いまでは使われなくなった塗料を使っている場合が多い。そもそも当時と同じ塗料は手に入らないし、耐久性などのために最新の塗料がレストアでも使われるのは仕方がないとはいえ、過剰にきれいになってしまい、味がなくなってしまうこともある。

 塗り方自体も昔はゆず肌(表面がうねうねとした仕上がり)だったりする一方、最近ではツルツルが当たり前で、レストアでも現代的な光沢を放つものもある。この点をどう評価するかだが、オリジナルと違うのは事実だ。

 そしてメカでは、部品が手に入らないというのは別としても、いま供給されているパーツは見た目がオリジナルと違っていることも多い。そうなると、見た目が元とは違ってくる。

 つまりオリジナリティとはなにか? フルレストアとはなにか? という究極の問題になってくるわけで、この点でもノンレストアで程度極上というのがあれば、フルレストアにも優ることがありうるというのはわかっていただけるだろう。ピカピカに再生されたフルレストア車も気持ちいいが、未再生車には宿り続ける魂というのもが感じられることもあるのだ。

 ただ海外で行われている究極のフルレストアでは、製造当時に使われていたオリジナルのボルトにまでこだわる場合もある。タイヤはさすがに無理と思いきや、展示用に当時物を探し出したりするから驚かされる。伝統あるコンクール・デレガンスでは当時の組み付け方まで審査されるが、ここまでやればレストアにも意義は出てくるかもしれない。

 日本の場合、フルレストアという定義から見直す必要があると思うし、フルレストアという言葉を安易に使うのも考え直したほうがいいかもしれない。いずれにしても、未再生のノンレストアで問題なければ、むやみにレストアする必要はないと言っていい。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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