軽の価値観を変えるためにとことん追求! 新型日産デイズがこだわったデザインとは (1/4ページ)

初期段階から1分の1モデルを作製し“実物”による徹底検証を実施

 新しいプラットフォームに、新設計のエンジンやCVT、さらには、軽自動車初となるプロパイロットの搭載など、全方位的な進化を遂げた新型デイズ。その進化の大きさはデザインについても同様だ。エクステリアデザインをひと目見て、1ステージも2ステージも洗練度が上がったと感じた方も多いのではないだろうか。

 デザイン開発のまとめ役を果たした石塚公一さんは、今回のプロジェクトにかけた想いを次のように語ってくれた。

「軽自動車はそのサイズのせいか、『軽ってこんなものだよね』といったマインドにとらわれがちです。私たちはまずその固定概念を打ち破りたいと思いました。軽という枠にとらわれず、理想のコンパクトカーを作り上げる。カテゴリーを超えた新しい表現を目指したい。そんな想いを大切にしながらデザイン開発に取り組みました」

 デザインチームの意気込みは、エクステリアからも感じ取ることができる。流麗でありながらしっかりと地面を捉えた堂々たるシルエット。豊かな抑揚による陰影が美しいボディサイド。品格のある華やかさをたたえたフロントマスク。これらはコンパクトカークラスと比べても遜色ない表現と言っていいだろう。

 エクステリアの魅力のひとつはボディサイドの豊かで洗練された抑揚だが、初期段階のスケッチを見ると、その表現が当初から意識されていたことがわかる。エクステリアデザインマネージャーの渡辺和彦さんに伺った。

「ボディサイドの面質表現は重要なポイントであり、とても苦労した部分でもあります。軽自動車規格の限られた全幅のなかで抑揚を付ける場合、単に彫りを深くしただけでは、コアとなる塊が貧弱に見えてしまいますし、見た目の印象もすごくビジーになって、洗練度が失われます。しかも新型では、外寸がほとんど変わらないのに室内の寸法が先代より拡大されています。“デザインしろ”がさらに少なくなっているわけです。ですから、1mmのスペースといえども、徹底的に使い切る必要がありました。そのため今回の開発では、初期段階から1分の1スケールのクレイモデルを作って検証・検討を重ねました」

 一般的な開発では、案をふたつ程度に絞った中期段階で初めてフルスケールのクレイモデルが作られる。初期段階のクレイモデルは4分の1サイズがセオリーだ。だが4分の1モデルでは、実際の「1mm」も4分の1になってしまい、徹底的に追い込むような検証は不可能だ。そこで新型デイズでは、初期の5案すべてにおいて、フルスケールモデルを作っている。これは極めて異例だ。クレイモデラーの木村勇一さんは、次のように振り返る。

「モデルの数もさることながら、5つの案は顔つきもそれぞれ違いますし、それをブラッシュアップするために倍以上のトライアルも行っています。また、軽自動車の限られたサイズで大きな抑揚を出すには、ときには極端に強調するような表現を溶け込ませる必要もあります。新型デイズでは人体の作りを意識した造形を行いました。引きしめるところは目いっぱい引きしめ、ふくよかな部分は内から外に向かって圧力をかけたような張力の表現です。ボディの下部に向かって絞り込んだ曲面などは、引き締まったくるぶしのイメージです」


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