イマドキ軽自動車はなぜ高い? そんないまでも安くて満足な「キセキの軽」3台とは (2/2ページ)

安くて安全装備の充実したモデルも存在!

 背景にはライバル同士の競争もある。とくに軽自動車は競争が激しく、たとえばN-BOX/スペーシア/タント/デイズルークスの場合、装備が似通ったグレードは価格も横並びだ。上記4車種の標準ボディ(エアロパーツを備えないタイプ)の売れ筋グレードは、140〜150万円にピッタリ収まる。

 このなかでN-BOX  G・Lホンダセンシングは、設計がもっとも新しいから機能も一番充実するが、価格は149万9040円だ。本来なら150万円を超えて当然の内容だが、ライバルに比べて割高感が生じると売れ行きに影響するため、無理に150万円以下に抑えている。

 このようにいまの軽自動車は、価格を高めながらも、それ以上に機能や装備を充実させたため好調。その結果、新車として売られるクルマの40%弱が軽自動車になった。

 しかしそれでも「軽自動車に150万円も出せない、安くて安全装備の充実した車種が欲しい」と思ったら、スズキ・アルトS(106万1640円)、ダイハツ・ミライースX・SAIII(108万円)を推奨する。低価格がコンセプトだから、歩行者も検知できる上級車種と同様の緊急自動ブレーキを標準装着して、価格は100万円以下。

 またダイハツ・ミラトコットL・SAIII(113万9400円)は、緊急自動ブレーキに加えて、サイド&カーテンエアバッグ、バイアングルLEDヘッドランプまで標準装着した。内外装も上質だから、ミラトコットもきわめて買い得な軽自動車だ。

 アルト、ミライース、ミラトコットは、いずれも全高が1550mm以下に収まっているため立体駐車場を使いやすく、なおかつ後席は意外に広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ分を確保した。これはコンパクトカーの平均水準で、MAZDA3の握りコブシ1つ半を上まわる。

 アルトやミライースの後席は、座面の柔軟性に欠けるため大人4名の長時間乗車には適さないが、片道45分程度の距離であれば問題なく使える。加えてボディが軽いため、4名で乗車してもパワー不足を感じにくい。

 クルマにとって安全性はもっとも重要な性能なので(安全装備よりも同じセンサーを使う運転支援機能が注目される昨今の風潮は誤りだ)、その充実によって価格が高まるのは仕方ない。

 また軽自動車はギリギリまでコストダウンされているため、装備を取り去って価格を下げるのは難しい。そうなるとコンセプトの異なるアルト、ミライース、ミラトコットが注目されるわけだ(アルトラパンは安全装備が歩行者を検知できない古いタイプになる)。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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