悩ましいトヨタ新型スープラの「3グレード」選択! 選んで正解なのはズバリどれ? (1/2ページ)

それぞれが独自の魅力を備えているため、並列の関係になっている

 新型スープラの生産は、オーストリアにあるマグナシュタイヤー社のグラーツ工場が受け持つ。開発者によると「マグナ社は少量の受託生産が得意で、スープラと基本部分を共通化したBMW Z4も手掛ける。製造の精度が高い」というが、輸入車だからグレードは限られる。

 スープラはグレードを3種類に抑えて、価格は100万円刻みとした。メーカーオプションパーツもない。選択肢はシンプルだ。

1)SZ(490万円)

 価格がもっとも安いグレードで、エンジンは直列4気筒2リッターターボを搭載する。最高出力は197馬力(4500回転)、最大トルクは32.7kg-m(1450〜4200回転)だから、動力性能は自然吸気のノーマルエンジンに当てはめると3リッタークラスだ。

 メカニズムはシンプルで、ショックアブソーバやデファレンシャルの電子制御機能は備わらない。最終型スープラ(A80型)のエンジンは直列6気筒3リッターだったが、動力性能は新型と当時のSZ同士を比べると同等に近い。そしてA80型スープラも、電子制御を抑え、スポーツカーの自然な運転感覚を大切にしていた。

スープラ

 ちなみに新型スープラは、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2470mmと短い。そのために回頭性は良いが、デファレンシャルの電子制御機能がないと、下りカーブで危険回避のためにブレーキングした時などは、後輪の接地性が緩く感じる。

 SZはタイヤサイズも17インチだから、上級グレードに比べると安定性不足だが、シャシー性能が高いために「持ち味」といえる範囲にとどめた。SZを購入した後、17インチタイヤのサイズを変えずにランフラットから普通のタイプに履き替えれば、乗り心地が柔軟になってカーブでは粘り感が強まるだろう。

 ホイールベースの短いクラシックな外観に相応しい運転感覚を味わえる。

スープラ

 SZは価格が安いからドレスアップにピッタリだが、A80型スープラやそれ以前のスポーツカーを知っている世代が乗ると、懐かしい気分になると思う。マツダ・ロードスターのSに似たところもあり、車両と相談しながら挙動を決めていく運転の醍醐味を味わえる。

2)SZ-R(590万円)

 2リッターエンジンはターボユニットを含めてSZと共通だが、過給圧を高めて最高出力は258馬力(5000回転)、最大トルクは40.8kg-m(1550〜4400回転)とした。自然吸気エンジンに当てはめると4リッター並みだ。

スープラ

 装備は後輪左右の差動制限機能を電子制御で積極的に変化させるアクティブデファレンシャル、ショックアブソーバーの減衰力を走行状態に応じて変えるAVS、運転席と助手席の電動調節機能、アルカンターラと本革のシート生地などが加わり、アルミホイールとタイヤのサイズは18インチに拡大する。

スープラ

 SZ-Rは前述のようにSZよりも動力性能が高く、各種の電子制御機能も追加して安定性も向上させた。その一方で車両重量は、最上級のRZに比べると前輪荷重を中心に70kg軽いから、軽快感も併せ持つ。3グレードのなかでは、峠道のスポーティドライブがもっとも得意だ。

 価格はSZよりも100万円高く、大雑把にいえば、この内の75万円前後は装備を充実させた対価になる。残りの25万円でエンジンのチューニングを行った。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
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13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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