まるで半自動運転のようなクルマのアダプティブクルコン! 過信に潜む危険とは (1/2ページ)

完全停止まで対応する全車速追従機能は便利だが……

 最近、中高級車にはもちろん、新型ホンダN-WGN、新型ダイハツ・タントのターボモデルなど、軽自動車にまで装備され始めたアダプティブクルーズコントロール(ACC)。従来の単なるクルーズコントロールとは違い、前車との距離を任意の間隔で一定に保ち、渋滞時には停止〜再発進してくれる機能だ。レーンキープ機能と組み合わせることで、高速走行ではドライバーの精神的・肉体的負担を劇的に低減してくれる効果があり、便利かつ安全でもある先進装備と言っていい。

 ボクもACC付きのクルマを所有し、また、多くのACC付きの新型車に試乗しているが、もちろん、ACCは万能ではない。まず、渋滞追従型でないと、本当に必要性を感じる、高速道路上での渋滞時に機能してくれない。旧来型のACCは約35〜115km/hの範囲内でしか作動せず、渋滞に対応していない。最新のACCは、例えばトヨタ・カムリのように、約0~180km/hといった、全車速対応というものまであるのだ。一部高速道路で120km/h制限区間があるため、渋滞追従に加え、せめて120km/hまで対応してほしいところだ。

 また、注意したいのはACCが作動中でも、ペダルから足を離してフロアに置いていていいというわけではないこと。つねに緊急の場合に備え、ペダル操作ができるようにしなければならない。

 そして、日本で販売されている国産車や輸入車のACCは、今のところナビゲーションのマップを読んでいない。欧州ではすでにメルセデス・ベンツがナビデータとACCをリンクさせたモデルをラインアップしているが、日本仕様はそうはなっていない。

 これはどういうことかと言えば、カーブだろうと、高速道路の出口だろうと、前車のいない料金所だろうと、減速操作は一切行われないということ。たとえば、ACCを80km/hにセットして、快適に高速クルージングしていたとしよう。前車がいれば、設定速度内で、任意にセットした車間距離を保ち、追従。これはついうっかりの急接近(あおり運転と誤解されることも)、自動ブレーキ作動の一歩手前の追突防止にもなり、ペダル操作から解放されるためじつに便利で快適だ。とくに、渋滞時を含め、足首疲労の低減になる。

 だが高速道路上で、減速しなければならないけっこうきついカーブがあっても、ナビデータとリンクしていないACCはそのままのスピードを保ち続けてしまう。高速道路のカーブ、出口、前にクルマがいない料金所でも同じ。結局、キャンセルボタンを押す、ブレーキを踏む、といった操作が必要になる。自動運転気分で、うっかりACCに身を任せきっていると、カーブなどに設定速度のまま進入し、曲がり切れずにクラッシュ! なんていうこともありうるわけだ。

 その点、欧州のACCは極めて賢く、地図データを読んでいるため、カーブでは減速するなどの制御を行ってくれるというから、さらに便利で安心なのである(自動運転に近い)。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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