単なる喰わず嫌い? 多くのクルマ好きが広くて便利なミニバンを毛嫌いするワケ (2/2ページ)

大人気のアルヴェルにも走りのいいグレードが存在

 また、トヨタ・アルファード&ヴェルファイアの3.5リッターV6モデルは、大排気量V6エンジンらしい豪放な加速力と、それに負けない安定感たっぷりのフットワークテイストを備え、ゆえにかつての走り屋、今はファミリーマンのユーザーやVIPにも、高額ながら受けに受け、売れているわけだ。

 現行アルファード&ヴェルファイアの3.5リッターモデルは、ダンパーに新バルブを採用。微低速域から減衰力を上げ、ゴツゴツせず、ボディの無駄な動き、バネ上のグラグラ感を押さえ、振動低減、操舵応答性向上を果たし、ステアリングを切ったぶんだけすっきりリニアに曲がる、ロール方向に逃げない乗り味を追求している。

 フットワークは、もはやミニバンの域を超えたレベルにある。とくにエアロ仕様の大径18インチタイヤ装着車は、設計基準の17インチタイヤ装着車より回転半径が大きくなるのは致し方ないものの(5.6m→5.8m)、それを補うべく、EPS=パワーステアリングは独自のセッティングとなり、切り方向、戻し方向ともに素晴らしくスッキリ、かつリニアなフィールの持ち主。結果、前輪のインフォメーションの確実さ、ロールの少なさ、曲がりやすさ、たとえ道幅が狭いS字カーブや山道でも思いのほか運転がしやすいと感じ、高速レーンチェンジ時のすっと水平移動する安心感ある感覚もあって、重心の高さを感じにくい。それこそドライバーズカーと言っていい人車一体感、自在感ある操縦感覚を示してくれるのだから、驚きを隠せない。ミニバン喰わず嫌いの人にぜひ試乗してほしい1台だ。

 ミニバンに否定的なユーザーにお薦めできる輸入ミニバンとしては、VWゴルフトゥーランがある。ゴルフの基本性能の良さは周知のとおりだが、それをベースにした7人乗り、スイングドアミニバンのトゥーランは、1.4リッターターボエンジン+7速DSG搭載にして、低回転域からトルキーにもほどがあるスムースなエンジン性能、速く走るほど意のままに応えてくれる、低重心感覚ある操縦性、フットワーク、全体的な走りの質感は、ゴルフ7ヴァリアントと比較しても文句なし。走りにちょっぴりうるさいユーザーも納得の走りを披露してくれる(決してスポーティというわけではないが)。

 ところで、キャビンがタイトで体にフィットするスポーティーなクルマに乗り慣れている人にとっては、1~2名乗車時に、後方の空間が無駄に感じられる……ということもあるだろう。ただ、家族が増えたり、友人とドライブしたり、ペットを乗せて旅行に出掛ける、なんていうシーンでは、その、普段は無駄と感じる空間に、感謝することになるに違いなく、しっかりとした走行性能に支えられた、見晴らし視界の爽快感、3列シート、空調環境、そして両側スライドドアの便利さを痛感できるはずだ。

 ミニバン喰わず嫌いでも、時代とともに進化している最新の熟成されたミニバンを検討する意味は、クルマの使い方によっては十二分にあると思える。今まで食べられなかった食材が、何かのきっかけでおいしく食べられるようになった、そんな経験と同じ。

 ちなみに、一部のミニバンには、スポーツカーにも使われる、車種専用のCOXボディダンパー(ヤマハ パフォーマンスダンパー)を装着することが可能(20系アルファード&ヴェルファイア2WD、50系エスティマ2WD、20系エスティマHVなど)。COXの説明によると「路面状況よって変化するボディーの変形や振動を素早く、かつ穏やかに整える効果があり、乗り心地に影響する路面の凹凸による突き上げ感や、走行中の変形時に発生する反発力だけを吸収。また、ワインディングロードにおいてはコーナリング時のボディーの揺り返し(反発)を吸収することで圧倒的な安定性をもたらすなど、その効果はドライバーだけでなく、同乗者も体感することができる」とのこと。

 それまでミニバンに乗っていて、クルマ酔いしていた子供が、クルマ酔いしにくくなったという報告もあるそうだ。ミニバンの走りに抵抗がある人はそういった製品を試すのもありだろう。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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