いまの技術じゃ事故は防げない? 衝突被害軽減ブレーキは高齢者ほど効果が薄いという衝撃の事実が公開 (1/2ページ)

先進安全機能により追突事故は減少しているものの……

 少々旧聞に付す話題となりますが、東京モーターショーの開幕に合わせたかのように、10月24日に『交通事故・調査分析研究発表会』が都内で開催されました。主催は公益財団法人 交通事故総合分析センター、ITARDA(イタルダ)の略称で自動車業界では知られている団体です。いくつもの興味深い発表がありましたが、ここでは衝突被害軽減ブレーキ(AEB)の効果を分析した発表から年齢別の効果についてクローズアップして紹介しましょう。

 ここで引用するのは『衝突被害軽減ブレーキ(AEB)の追突事故低減効果補足分析(研究部 主任研究員 木下義彦)』と『衝突被害軽減ブレーキ(AEB)の世代別効果分析(研究部 研究員 近藤真弥)』になります。いまやAEBは軽自動車でも装着率が高くなっている交通事故を低減する先進安全装備ですが、その効果をマクロデータから明確にしようというのが両研究に共通するテーマ。モノによっては追突事故を8割ほど減らしているともいわれるAEBの効果はいかに分析されたのでしょうか。

『衝突被害軽減ブレーキ(AEB)の追突事故低減効果補足分析』は、AEBの年齢別・免許取得経過年数別の効果を分析しようというものですが、そうした公的データはないといいます。そこで「交通暴露量」を利用して推定した結果、非常に興味深い結果が出てきました。

 軽微な交通事故については統計がないので、追突死傷事故を対象に第1当事者(一般に事故の原因を作った側)の年齢別に、AEBの効果(事故減少率)を推定した数字は以下のように導かれました。

29歳以下:55.2%
30~49歳:59.6%
50~64歳:55.0%
65~74歳:48.4%
75歳以上:36.7%

 いずれの年齢層でもAEBによる効果は見て取れますが、75歳以上では効果が薄れているように見えます。さらに、そうした点に着目して同じく交通暴露量をもとに研究したのが『衝突被害軽減ブレーキ(AEB)の世代別効果分析』です。こちらは軽自動車を対象に、第一世代(赤外線レーザーなどを用いた低速域限定のAEB)と第二世代(カメラやミリ波レーダーを用いて対応速度域が広く、歩行者も認識できるAEB)による効果の違いまで含めて調査したものです。なお、軽自動車を調査対象としたのは同一モデルでAEBなし・第一世代AEB・第二世代AEBが存在するので純粋にAEBの性能差をはかりやすいためといいます。

 予想通り、AEBのメカニズムが進化するほど交通事故を低減する効果が明確に増しています。第一世代と第二世代のAEBで対車両の追突死傷事故に対してどれほどの減少効果が見られたかといえば、第一世代で37.0%、第二世代では62.9%といいます。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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