【近距離こそEVの真骨頂ならなぜ?】軽自動車規格の電気自動車がほぼ登場しないワケ (2/2ページ)

最初からEV前提なら価格を抑えることも可能か

 このことから、エンジンの軽自動車の作り方そのままにEV化する発想では、どうしても高価なクルマとなり、身近に使える軽自動車としての価値をいかに生み出すかは難しく見える。第46回東京モーターショーで日産自動車は、IMkという軽EVのコンセプトカーを出展したが、その実現にはやはり原価の課題が残るとの話であった。

 また、トヨタは超小型モビリティのEVを、同じく東京モーターショーで出展したが、こちらも販売価格をどうするか検討中であるという。場合によったら、販売という形態ではなくリースのような利用法となるかもしれない。

 一方で、私は5年ほど前から、100km100万円軽商用EVの実現を、各自動車メーカーに訴えかけてきた。走行距離は100kmに限定するが、100万円で買える軽商用EVを実現してほしいという要望である。リチウムイオンバッテリーの原価が高いことはやむを得ないが、これまでエンジン車で当たり前のように採用されてきた装備をゼロから見直し、EVに必要最小限の装備を前提に、もっとも原価に厳しい商用車のEV化に挑戦してはどうかという提案である。

 商用車であれば用途が比較的限られ、必要な走行距離も見通しやすいので、リチウムイオンバッテリーの搭載量も最小限に抑えられる。そのうえで、暖房はシートヒーターやステアリングヒーターを主体とし、暑さ対策はエアコンディショナーではなくクーラーにするなど、これまで当たり前と思えた装備を見直すことを試してみる。それによって軽商用EVの実現が成れば、乗用車にする際には、距離を延ばしたり、装備をより充実したりすることに原価の上乗せをし、より快適な軽EVにすれば実現可能ではないだろうかと考えた。クルマ作りの原点を見直す取り組みが、軽EVの実現には不可欠に思う。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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