【同じ2Lガソリン車比較で67万円高!】高すぎるマツダ・スカイアクティブXはユーザーメリットがあるのか? (2/2ページ)

現時点では価格差などを回収するのはほとんど不可能

 そのうえで、車両価格を同じPROACTIVEグレードのハッチバック車(2WD)で比較すると、SKYACTIV-Xが314万円、G(ガソリン)の2リッターが247万円、D(ディーゼル)の1.8リッターターボが274万円である。差額は、それぞれ67万円(G)、40万円(D)である。

 年間に1万km走行するとして、ガソリン車との燃料代差額2100円を埋め合わせるのに319年、ディーゼル車との差額の埋め合わせは、車両価格と燃料代ともにディーゼル車のほうが安いので、埋め合わせられないことになる。

 環境性能の比較では、同じガソリンエンジン同士で、二酸化炭素(CO2)排出量はSKYACTIV-Xでは減っており、ディーゼルターボに近い。だが、汚染物質の非メタン炭化水素(NMHC)と窒素酸化物(NOx)の排出量は、ガソリンエンジン車より増えている。もちろん排ガス規制は達成しているものの、SKYACTIV-XはCO2でディーゼル並みでも、大気汚染物質は通常のガソリンエンジンより増加するのである。

 ちなみに、電気自動車(EV)の例として日産リーフは、1km走るのに掛かる電気代が、東京電力の従量電灯Bと呼ばれる一般家庭の標準的な契約、かつもっとも電気を使った際の電気料金で試算すると、4.73(標準車)~4.92(e+)円だ。SKYACTIV-Xと比べて、半分近い53~55%の燃料代で済む。なおかつ、CO2も有害ガスの発生もゼロだ。もっとも安いグレードであれば324.3万円ほどで購入できる。

 マツダは、ウェール・トゥ・ホイールで燃料製造から使用までのCO2排出量を比較すると、最高の効率を実現したエンジンは、EVとCO2排出量が変わらないと主張する。しかし、SKYACTIV-Xはその最高効率に達しているのか。また、10年後の電力事情が、今のまま火力発電依存が続くと考えるのか。COP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)25での論議はあいまいに終わったが、スウェーデンのグレタ女史が指摘するように、気候変動を実感する今日、火力依存の電力が永続する可能性は低く、なおかつEVであれば大気汚染物質は出さないのである。

 経済性という直接的な価値とともに、大気汚染防止と将来へ向けた気候変動抑制に、SKYACTIV-Xがどれほど役に立つのか明確には見えてこない。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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