【2021年以降に自動ブレーキ義務化は本当に効果ある?】高齢ドライバーによる悲惨な事故は減るのか (2/2ページ)

高齢になるにつれてAEBによる効果が薄れるというデータも

 もっとも冒頭で記したようにAEB装着車はすでに全体の8割となっているわけだから、ここから義務化していき、ほとんどのクルマにAEBが装備されるようになっても、全体としては飛躍的に追突事故が減るとはいえない。

 AEBの効果はドライバーの年齢によって異なるというのも気になるところだ。同じくITARDAの調査によるとドライバーの年齢別によるAEBの低減効果は次のようになっている。

29歳以下:55.2%

30~49歳:59.6%

50~64歳:55.0%

65~74歳:48.4%

75歳以上:36.7%

 一目瞭然、高齢ドライバーになるとなぜかAEBの効果が薄れている。とくに75歳以上は追突事故を起こしやすい年齢カテゴリーであり、他の年齢層のように半減するというほどの効果が期待できないことは明らかだ。これだけ低減率が異なる理由は不明だが、世代ではなく年齢によって効果が変わってくるとすればAEBの義務化によって事故をゼロにするというのは夢物語といえる。それでも追突事故においてはAEBが明確な効果を持つことに疑いはない。

「AEBの標準装備化によっても事故はなくなるわけじゃないだろう」という極論で批判するのは簡単だが、事故を減らすことができればクルマによってケガをしたり、命を失ってしまったりする人が減るわけだ。少しでも、イヤな思いをする人を減らすことにつながるのであれば、打てる手は可能な限り実行するというのは、正しい文明社会の方向といえる。さらに標準装備が義務付けられることで、センサー類のコスト低減やシステム制御の洗練などにもつながるだろう。

 ちなみに、国土交通省が義務化を求めているAEBの性能というのは、40km/hの走行中に停止している車両には衝突しないこと、60km/hの走行中に速度差20km/hの車両に衝突しないこと、そして30km/hの走行中に横断する子供(身長115cm)を検知して衝突しないことが試験項目として設定されている。非常に高いレベルのAEBが求められているというわけだ。

 義務付けの時期は、国産車の新型車においては2021年11月、継続生産車は2025年12月。輸入車については新型車で2024年6月頃、継続生産車は2026年6月頃を予定している。輸入車が遅れるのは、欧州でのAEB義務化が2024年前半を予定しており、そのスケジュールに合わせるためだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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