【試乗】一番小さいSUVでも実力高し! VW T-Crossが見せた軽快な走り (2/2ページ)

ノーマルモードでも十分な加速性能を味わえる

 スタートからアクセルをさほど踏み込まなくても抵抗なく滑らかに進むのは、エンジン特性と1速40、2速70km/hの加速重視のギヤリングも効果的だからだろう。アクセルを踏み込んでいったときは、3000rpmから3気筒特有のサウンドが聞き取れる。6500rpmからレッドゾーンだが、走行モードの変化に関わらず6000rpmで自動シフトアップしていく。

 走りはいたって正統派で真面目!? それはどういう意味か。まずハンドリングは操作に対して軽快に向きを変え、背の高さによるロールの少なさに安心感がある。クイックとかシャープとかの個性はなく、操作したことを自然かつ忠実に走りに再現する。峠のタイトコーナーでもアールに合わせて切り込むことの気楽さ、トレース性の高さは、運転のしやすさに繋がる。

 欲を言えば、電動パワステの舵角に応じて手応えの変化が少なく、どの程度切り込んだのかの判断はつきにくいが、といって直進性に難はない。アメリカのフリーウェイでも試乗しているが、150km/hで走る流れに乗り、路面の綱ぎ目での周期的な上下動は繰り返されるものの、ストローク量たっぷりのサスペンションと直進安定性の高さは、さすがドイツ生まれアウトバーン育ちの格の違いを示す。

 スポーツモードを選ぶと、アクセルの応答性が速くなり、忙しい。踏み込む量と速度以上にエンジンレスポンスが過敏になる。俗に言うアクセル早開きである。ここは自分の操作速度と操作量で対応すればいいわけだから、走行モードはノーマルのままでも十分自然で扱いやすい、とお伝えする。

 動力性能は平坦路ではまったく過不足はない。ただ3名乗車で峠の登りは、期待どうりの加速を得るにはリミット近くまで回す必要がある。それは出力特性というよりも、排気量に準じているのかもしれない。ちなみに燃費は正確には計測できていないが、WLTCモードでは16.9km/Lだ。

 国産が得意とするこのBセグメントにおいて、TクロスはVWらしい質実剛健さと最新の安全サポートを展開してみせた。国産の強みは価格だろうが、乗り比べるとTクロスのオトナの完成度が判るだろう。


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