【試乗】ニュル最速を達成したルノー・メガーヌR.S.トロフィーRからひしひしと伝わる本気っぷり (1/2ページ)

ベースのトロフィーがもつ性能はすべてニュル攻略を見据えたもの

「7分40秒1」

 こんな激辛タイムに誘われて筑波サーキットに挑んだのが昨年の暮れのことだ。

メガーヌR.S.トロフィー」があの過激なニュルブルクリンクで、FFモデルとして最速タイムを叩き出したことに触発され、それでは日本のタイムアタックの尺度のひとつとされる筑波サーキットで走り味を試そうとなったのである。

 そこでのインプレッションはすでに報告済だ。ボディ剛性は鍛えあげられ、エンジンパワーは大容量ターボチャージャーに依存した特性であり、低速域のレスポンス遅れを覚悟しつつも、パワーバンドの爆発的なトルクを優先した仕様だったのは、ニュルブルクリンクの長いストレートで遅れないための策だろうし、あの急勾配の上りを駆け上がるには圧倒的なターボトルクが欠かせなかったのだろう。

 FF最速を競う最大のライバルであるホンダ・シビック・タイプRは2リッターだから、1.8リッターのメガーヌR.S.トロフィーは劣勢だ。それを強引なブーストアップで迎撃する腹積もりなのは明らかだ。

 コーナリング特性は刺激的で、フロントの切れ味をとことん鋭くさせているだけでは飽き足らず、リヤステアを併用することで、旋回性と安定性を両立させていたのである。鋭くエイペックスを突き刺すけれど、テールハッピーではないという絶妙なバランスに仕上げているのだ。

 ニュルブルクリンクはじつは、アンターステアとの相性が悪いのである。高速コーナーが多いからと安定傾向にセットしたがるのだが、タイムを稼ぐためにはオーバーステアの方が都合がいい。それを知り抜いた仕様だと思えた。

 それがFF最速記録のための公式である。現実的にはもうシビックタイプRは販売を一旦終了しているから、現状敵はいない。敵はしっぽを巻いて退散したのであり、もう土俵上にはいない。ひとり横綱の地位を確立したのに、それでも手を緩めないのがルノーの真骨頂である。


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