やっぱりノーマル? 改造車の個性もアリ? 規制緩和で超多様化しているタクシー事情 (2/2ページ)

不特定多数の人が乗るためこだわりは抑えられている

 かつて、先代メルセデス・ベンツEクラスをタクシー車両として導入したタクシー会社を取材したことがある。実際にベンツタクシーに乗って、都内を走ってもらい、その間に乗務員に聞き取りを行ったのだ。その時の乗務員は「ロング(長距離利用)のときは、高速道路も使いますので、高速道路では確かにベンツの走りは素晴らしいです。ただ都内で一般道路を走っていると、足まわりの硬さが目立ってしまいます。実際その旨を話されるお客様もいらっしゃいます。その面ではクラウンは日本の道路にあった足まわりになっているのだと改めて感じました」とのこと。

 メルセデス・ベンツは中国などの市場拡大に伴い、以前よりはだいぶソフトな乗り味になるなど、だいぶ変わってきているとの話も聞く。その一方で、クラウンは明確にメルセデス・ベンツやBMWを意識するようになってきており、最新モデルでタクシーとして乗り比べると、また話が少し変わるようだ。

 前述したNV200タクシーも単純にライトバンをタクシー仕様にしただけでなく、足まわりも入念に客を乗せて走るタクシー向けに調整しており、一見するとライトバンと同じに見えるが、実は別ものに近いと以前関係者から聞いたことがある。

 個人タクシーは法人タクシーと異なり、クラウンのロイヤルサルーンなど、豪華なものが多いので、“どうせ乗るなら”と好んで利用するひとがいる一方で、乗務員の好みで“いじっている”のを嫌い、法人タクシーを好んで利用するなど、利用者個々で趣向性も異なるので、“いじる”ことの賛否はなかなか語ることはできない。

 ただ、あまりにこだわった車両にしてしまうと、“お得意さま”を持つことの多い個人タクシーでは、いじることによる“個性”は一定の客層が望めるだろうが、より不特定多数の利用となる法人タクシーでは、“個性”はネガティブになりがちだし、そもそも保有するタクシー会社が“いじる”ことを許さないはずである。

 タクシー乗務員の多くは、やはりさまざまな価値観を持つ、不特定多数のお客を乗せるということで、クルマへのこだわりは抑えめにしているのが一般的といえるだろう。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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