単に「ヨンク」じゃダメ? メーカーが4WDに「オリジナルの名前」をつける事情 (2/2ページ)

狙いや仕組みの差別化を図るために独自の名称をつけている

 アウディのクワトロがブランド化したことにより、アウディは、アルミ車体を基とした軽量化を「ウルトラ(ウルトラライトウェイトを省略して)」と名付け、電動化を「e-tron(イー・トロン)」、情報通信を「コネクト」と、それぞれ名称をつけることにより、たとえ他社と同様の機能であっても、技術の優位性をブランド名として浸透させようとしている。これは、「技術による先進」という、アウディの企業メッセージにも通じる。

 トヨタは、1997年に世界初のハイブリッド量産車であるプリウスを発売した。その後、いくつかのハイブリッド方式を量産化するなかで、2001年のエスティマ・ハイブリッドの導入に際し、E-Fourという名称を4輪駆動に与えた。これは、前輪駆動を基にしたハイブリッドシステムに、後輪用として別のモーターを取り付けることにより4輪駆動化し、エンジン車の4輪駆動とはとは別の方式であることを明らかにした。

 以後、どのようなパワーユニットのクルマであっても、駆動輪ではない車輪側へモーターを取り付ければ4輪駆動にできることが広まった。たとえばホンダのNSXは、ミッドシップのため後輪駆動だが、前輪側へモーターを搭載することで4輪駆動としている。

 クワトロにしても、E-Fourにしても、単に4輪駆動という機構であるだけでなく、新しい価値や仕組み、あるいは制御の仕方によって、4輪駆動の価値を高めたり幅を広げたりしたメーカーの狙いを明らかにするため、4輪駆動に名称をつけることを意識しだしたのだろう。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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