反則金がない! マンションの管理組合問題! 世界中が電動化へ向かっても「電気自動車」が日本で普及しないワケ (1/2ページ)

日本は二酸化炭素排出量に対する反則金が存在しない

 日本の自動車メーカーが、いまひとつ電気自動車(EV)の販売に勢いづかないかという点について、いくつかの背景が考えられる。

 最大の要因は、日本の電動車両の導入政策に、優遇策はあっても罰則がないからだ。この点については、昨年トヨタが催した記者会見の場で、寺師茂樹副社長が記者の質問に答えて、次のように語っている。「EVの採算がまだ十分に合わないのは事実だが、海外市場でのクレジット(反則金)を支払うよりましだから」。そのうえで、2030年までには日本の道路事情に最適なEVを導入したいと述べた。

 米国のZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)規制、中国のNEV(ニュー・エナジー・ヴィークル)規制、そして欧州の二酸化炭素(CO2)排出量規制は、それぞれEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)の導入割合や、企業としての平均CO2排出量を達成できなければ、反則金を支払わなければならなくなる。たとえハイブリッド車(HV)を持っていても、反則金を支払ったのでは新車販売を伸ばしても利益が抑えられてしまうのである。

 もうひとつの理由は、現在のところまだリチウムイオンバッテリーの原価が割高で、なおかつ、消費者が価値を見出せる車両販売価格からするとあまり高価な車両価格は付けられず、価格の上下をあまり気にしない高級車からでないと導入しにくいからだ。たとえば、欧州のCO2排出量規制では、企業平均値で実現しなければならず、当然大型の高級車ほど燃費が悪いので、そこから電動化が進む。したがって欧州自動車メーカーは、いかにもEVやPHEVの導入に熱心に見えるが、そうしなければ反則金の対象となってしまうのだ。

 米国では、EV専門メーカーのテスラはZEVの規制対象とならないので(売っているクルマすべてがEVなので)、逆に、規制を達成できないメーカーへ、規制による導入台数の余剰分をCO2排出量枠という権利として売り、利益を得ている状況だ。ZEV規制やNEV規制によるEVやPHEVの導入台数は年々増え、その負担が大きくなっていくので、トヨタの寺師副社長の発言にもつながることになる。

 以上のことから、EVの導入は海外市場が優先され、日本国内へは遅れるのである。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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