SUVブームの恩恵を受けるのは「トヨタ」だけだった! RAV4・ハリアー・ライズなど販売上位を独占できた理由とは (2/2ページ)

トヨタ以外のメーカーはSUVブームに乗れていない

 日産キックスは注目度の高い新型車だが、2020年8月時点では納車が進まず、登録台数は売れ行きの下がった日産エクストレイルと同程度だ。販売店にキックスの納期を尋ねると「2020年9月上旬の契約で、2021年の2月から3月」という。この調子では1カ月当たりの登録台数も伸び悩み、販売ランキングの上位に入ることは考えにくい。仮に受注が好調でも、登録と納車が進まないのでは、好調に売れたことにならない。

 以上のように、いまはSUVが順調に売れる貴重なカテゴリーなのに、トヨタ以外のメーカーはブームに乗れていない。そのためにトヨタの1人勝ちになった。

 過去を振り返ると、市場動向を見極めた上で複数の新型車を一気に投入して、需要をゴッソリ一人占めするのはトヨタが得意な戦略だ。ミニバンの普及期も、同様の方法で売れ行きを伸ばした。今はそれがSUVで繰り返されている。

 そして最近はSUV以外のカテゴリーでもトヨタの新型車が活発に投入され、ヤリスとカローラシリーズは販売ランキングの上位に入った。その結果、国内で販売された小型/普通車の約50%がトヨタ車になっている。

 この背景には、軽自動車に偏った売れ方もある。2020年1〜8月において、国内で新車として売られたクルマの37%が軽自動車だった。しかもダイハツやスズキだけでなく、ホンダ車の52%、日産車も42%が軽自動車だから、小型/普通車の販売に力が入らない。

 軽自動車が多く売れた結果、粗利の多いSUVを逃がす本末転倒は、今の国内販売を象徴しているだろう。国内に注目して戦略を立てないから、売りやすい軽自動車だけが増えて、SUVを含む小型/普通車はトヨタに牛耳られてしまった。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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