昔の常識が通用しない! 「板金屋」も「ユーザー」も泣くぶつけると「超高額」な最新車の技術3つ (2/2ページ)

ユーザーメリットがある素材も直すとなると高額になりがち

2)高張力鋼板

 新車紹介でも必ずと言っていいほど出てくるのがこちらの素材。ボディパネルや骨格などに使用されるのだが、その名のとおり、張りが強いのが特徴の鉄板だ。張りが強ければ剛性を高められるので、その分、薄くできて、軽量化につながる。軽量ということは燃費にも好影響を及ぼすから、各メーカーともしきりに使用しているし、張りもドンドンと高いものを使用するようになっている。

 こう見ると喜ばしいことだが、直すとなるこれが大変。丁稚時代にヤカンや鍋を叩いて作って練習したような熟練の板金職人ならヘコミも直せるが、基本的には無理。またパテも専用でないとダメだったりする。なので、最近はパネルごと交換というのが当たり前になってきているが、ここでもひと苦労。たとえばスポット溶接機は高張力鋼板用を使用しないとダメだし、溶接の熱でもゆがみにくいなど、まさにダメ尽くし。当然、費用もかさみ、保険を使うならいざしらず、自費となると目玉が飛び出ることもある。

3)自己修復塗装

 日産のスクラッチシールドやトヨタのセルフリストアリングコートなど、ちょっとしたキズならしばらくすると元に戻るという塗装がある。日産が最初に実用化して、じわじわと増えている状況なのだが、細かいキズはいいとして、塗装して直すとなるとこれが大変。弾力性のある特殊な塗料を使うので、当然のことながら高い。プロによれば「倍じゃ効かないレベル」とのことで、「お客さんと金額でもめるのがイヤで実際は普通の塗料で直しているところもあるのでは」という声もあるほど。

 そのほか、テールゲートやフェンダーなど、剛性がかからないパネルはドンドンと樹脂化していて、ぶつけると板金はできないので丸ごと交換となるし、予算削減の頼みの綱だった中古パーツも高騰中だ。20年ぐらい前までは、軽く板金して塗装した際の目安はパネル1枚、3万円ぐらいと言われていたが、今やそんなことはなく、「場合によっては10万円」になることもあるので、とにかく派手にぶつけないこと。

 今でもちょっとヘコミを直して、軽く塗ってもらうだけなら安く済むと考えているお客さんはけっこういる、と何人かのプロは言うが、まずは意識から変えないと、いざ補修するときに慌てることに。ちなみにこのような状況なので、保険会社もできるだけ出費は抑えたいために「ハイどうぞ」とならないこともあるので、この点も覚えておいてほしい。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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フィアット500(ヌウォーバ)/フィアット・プント/その他、バイク6台
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レストア、鉄道模型(9mmナロー)、パンクロック観賞
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遠藤ミチロウ、岡江久美子

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