渋滞も起こるのになぜ? 「ETCゲート」の通過速度を「20km/h以上」に設定しないワケ

料金所通過後の事故防止など安全面のため20km/hを指定している

 いまや高速道路利用者の9割以上はETCを利用しているという。ご存じのようにETCというのは車載器に専用カードを差し込んで利用する、ノンストップの料金収受システム。

 料金所でETC車載器と通信を行って、正常に通信できればゲートを開けて走行を許可するといったのが大まかな仕組みだ。そうした料金所には20km/hを目安に速度を落とすような看板が立っている。それを見て「20km/hでないと通信できないような仕組みはダメだ。もっと高速でも通信できるはずだ」と批判する人もいるのが、その批判自体は間違っている。日本のETCは規格としては120km/hオーバーでも通信可能だ。その証拠に首都高速のような出口に料金所がないタイプの有料道路では、ほぼ減速することなく通過してもしっかりと通信できている。

 一般的な料金所に使われているシステムでも80km/hまでは通信可能なスペックを持っている。ならば、なぜ20km/hまでの減速を求められるのか。それは事故防止のためだ。さまざまな理由で料金所のゲートが開かないことがある。そうなると一時停止をすることになるのだが、後続車が高速で走っていると、追突の可能性が高まるため、それを防ぐための目安として20km/hに落とすよう求められている。また、有人料金所を利用するユーザーは一時停止するためETCゲートを利用する車両が高速で通り過ぎていては合流時に危険が生じる。そうしたことも考慮して20km/hという速度になっているともいえる。

 ちなみに、ETC料金所でゲートが開かないというケースで、機器同士の通信不良というのは非常に低い確率といわれている。もっとも多いのがETCカードの差し込み不良、ついでETCカードの有効期限切れが多いという。つまり、ヒューマンエラーが多いというわけだ。いまどきのETC車載器であればエンジン始動時などにカードの有無や有効期限の案内などを音声で行ってくれる。高速道路を利用する際には、始動時から気をつけるようにしたい。

 結論をまとめれば、ETCのシステムとしては減速せずとも通過可能だが、おもにヒューマンエラーによって発生する一時停止車両や、ETC非搭載車との合流時のアクシデントを防ぐために20km/hという通過速度が求められているといえる。

 なお、ETCであればすべてが通過できるわけではない。スマートICなどに使われている簡易型ETCは一時停止が前提のシステムだったりする。そうした出入口には大きく「一時停止」を示す看板などが出ているはずだ。通常の料金所感覚で20km/hで通過しようとするとゲートを破壊するなどの事故につながってしまうので、注意してほしい。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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