「プアマンズポルシェ」は褒め言葉! 新型で「原点回帰」と言われる日産フェアレディZの「そもそも」の立ち位置とは (2/2ページ)

初代は手ごろな価格でポルシェのようにスポーツカーを楽しめた

 そして米国日産の社長であった片山豊氏の目に触れ、クーペ姿の初代フェアレディZの開発がはじまったのである。結果は、米国で爆発的な人気を得ることになる。

 当時「プアマンズポルシェといわれた」と、松尾は振り返る。その意味は、裕福でない人が乗るポルシェというような負の意味ではなく、手ごろな価格でありながらポルシェのようにスポーツカーを楽しむことができる賞賛の言葉であるのだそうだ。

 クルマが発明され、そして量産技術によって世界的な普及の足掛かりをつけた、欧米の人々は、それまで馬を駆って速さや躍動を体感してきたように、クルマの運転からも、たんに実用性や快適さだけでなく、躍動感を感じ取ろうとし、それを暮らしのなかで楽しむ姿がある。

「レースをやっている」「サーキット走行を楽しんでいる」との言葉が、日常会話のなかに出てきて、それはプロフェッショナルを目指すような高度な話ではなく、自分の技量のなかで楽しむ喜びを、当たり前のように語るのである。そうした欧米人に、フェアレディZはまさに待ちかねたスポーツカーとして映ったのだろう。同様の感覚は、マツダのロードスターにも当てはまるに違いない。

 一方で、あらゆる車種においてフルモデルチェンジでは、さらなる進化を求めることになる。それによって誰もが手ごろな価格で手に入れられる価値から、高性能や上級さを求めるようになり、当然ながら手にできる人の数は限られ、そこで原点回帰が起こるわけだ。

 7代目を迎えるに際して、再び原点回帰が行われるなら、今度の新型フェアレディZも大いに期待できるのではないかと思う。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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