人気はあれど「沢山売れる」クルマじゃない! 日産が赤字で苦しいなか「フェアレディZ」の新型を発売するワケ (1/2ページ)

伝統ある名車の新型発表に日米のファンは湧いた

 日産がフェアレディZをフルモデルチェンジすることを発表した。2020年10月4日までは、ニッサンパビリオン(期間限定のエンターテインメント施設)にてプロトタイプが展示されたので、その姿を目に焼き付けたというファンも少なくないだろう。初代フェアレディZ(S30)や280馬力規制の元となった4代目モデル(Z32)のスタイリングをモチーフとしながら、確実に新しいZカー像を具現化した姿は、なかなかに好評のようだ。

 それにしても、2019年度の決算では当期利益で6712億円もの赤字を計上した日産が、マスマーケットを狙えることが考えづらいフェアレディZのフルモデルチェンジを敢行するというのは驚きだ。もちろん、自動車の開発スケジュールというのは数年前に決定しているので、ここまでの状況になるとは思っていなかったのかもしれない。とはいえ電動化やCO2排出量規制が最優先される時代に、V6ツインターボでマニュアルトランスミッションを組み合わせるというパワートレインのスポーツカーを新規で起こしてしまうというのは、ビジネスとして挑戦的過ぎる印象もある。

 もっとも、スタイリングやインテリアを見ればわかるように、新型フェアレディZ(プロトタイプ)が基本的に現行フェアレディZ(Z34)のプラットフォームをベースにしていることは間違いない。もしかするとプロトタイプは従来型プラットフォームに新しいスタイリングのボディを載せただけという可能性もあるが、おそらく新型Zはプラットフォームをキャリーオーバーで活用していると考えて間違いないだろう。

 また、エンジンについてもV6ツインターボとしか発表されていないが、スカイライン400Rなどでおなじみの「VR30DDTT」を搭載すると予想されている。悪くいえば、ありもので作ったニューモデルといえるが、それはスポーツカーという数が出ないクルマをペイするためには、手堅い手法ともいえる。

 そもそも初代フェアレディZのエンジンだって日本仕様は「L20」で、セドリックやスカイラインに先行して搭載されていた。そうしてメカニズムにおいては社内の資産を活用することで「手の届くスポーツカー」として大ヒットしたのだ。このような歴史を考えると、新型フェアレディZにも、手の届くスポーツカーという伝統を期待したくなる。そしてプラットフォームなど開発コストのかかる部分をキャリーオーバーしたということは、価格面での原点回帰が期待できるというものだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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